二次元のイデオロギー

昨今の芸術において、殊更考えさせられる日々。

AIまでもが絵を描く時代となり、イラストの表現の幅は広がる一方…二次元の相対的なイデオロギーについて疑問と懸念が沸き起こる。

人気漫画家や若者から指示されるイラストレーターの方々の作品を拝見するのだが、やはり何と言うのか「現代的二次元」のイメージに固執しつつ、大衆が持ち得る「内面的欲求不満」を表層化したものと感じている。


もちろん絵は好きだ…見るのも描くのも楽しい。

私はよく絵を描くのだが一時期、芸術をするために文学や哲学、神話や宗教画について学び、音楽の世界に足を踏み入れることもままあった。

だが、芸術に価するものにいざ立ち返ってみると、自然の壮大さと美しさに敵う筈もなく…私は芸術の道を断念せざる終えなかった。


そして、躓(つまづ)きの大きな要因となったのが「二次元のイデオロギー」である。

それはもうアートに対する玉砕の如く…二次元の大きな壁にぶつかってしまったのだ。


前述した通り、現代のアニメーションやデザイン的イラストはキャラクタライズに基づき、その根底として在るのが大衆の欲求である。偶像として存在しなければならない非現実的な美少女キャラクターの繁茂。それが現代のアート表現の結末と言えよう。


ピンクや水色、パステルカラーのアクセサリーをふんだんに盛り込んだ可愛らしい世界観に加え、エナジードリンクや自傷行為の傷痕、それを覆い隠すようにパステルカラーの絆創膏をこれでもかと貼り付け、ぬいぐるみのストラップをじゃらつかせた「闇=病み」といった毒のある現実感。

さらに別視点から、偶像の持つ奇妙な「無限の力学」が伺える。

金髪や銀髪…色素の薄い繊細で華奢な少女のキャラクターが、重機や戦闘機、次いでライフルやショットガンの武装を施し戦場へと向かう。おまけに美少女たちは咥え煙草にアルコールと、可愛らしい顔つきとは相反した出で立ちで大衆の欲求を煽るのだ。ここに現実の少女達ではおおよそ不可能であろう、重量感のある武装と「生と死」に直面する悲愴感が確かに存在する。


健全な筈の十代少女から成る二次元世界のイメージ。それらは実のところ、アイドリズムを反映する美少女達へ悲哀や虚無感が投影されたファンタジーであり、成熟した大人達によるリアリズムの象徴と言えるのだろう。


※アイドリズム…造語、ここでは偶像化に拍車をかける意味として使用。

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