Colorful.ColorLess…

靑煕

満月と初声

初めての声は憶えていない。

寒空に艶めく檸檬色。

凍てつく闇に大きな天球儀を浮かべ、幾何いくばくか小さな瞬きがちらちらと音を立てては氷る。

冴えた空気がしずかに街を包む。


そんな夜だった。


赤ん坊の割に大人しく夜泣きもしない。

いつも独り静かに眠っているか、目覚めてもほとんど母乳を飲まない病弱な子。

小さな身体で高熱に耐え、気付けばいつも点滴を打たれていた。家族は息をく間もなく仕事へ…曾祖母までいる4世代家系だ。

産声から8ヶ月後には物を認識した上で言葉を話し、年寄に囲まれて時代劇やら歌謡ショーを聴いて過ごす日々。

飼い猫の腹を枕に寝息を立てながら、穏やかな風と日の光に包まれる。


産衣うぶぎの幼子はまだ夢の中に…

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