【番外編一】生えちゃっ……た……
本来、一年前小説家になろうのみに投稿していた【エイプリルフール企画】になります。
この度今作に応援やレビュー等いただき、もっと盛り上がってくれたらと思いました! 懐かしき学園でのドタバタをご覧ください! ここだけ見てもわかるように書いていますので、ご安心を!
ちなみにこの内容は……まあ、とある作品に影響されましてね。
長くなりすぎたので、三話に分割しています。
――――――
「ん、んん……」
ふと、目が覚める。目の前には、すっかり見慣れた天井。
この天井を目にするのも、私がこの学園に来て過ぎた日数の分。何度と目にした。
ふぁ、と軽くあくびをする。どうやら、いつもより目が覚める時間が早かったようだ。
とはいえ、もう朝であることに変わりはない。このまま、もうちょっとごろごろしてから起きようかな。二度寝はしないよ、うん。
……むずっ
「……んん?」
ふと、違和感があった。もしかしたら、目を覚ましたのはこの違和感が、原因なのかもしれない。
違和感の正体はわからないけど、なんかもぞもぞするのだ。……下半身が。
なんだろう、これ。昨日まで、こんな違和感はなかったはずなのだに。
下半身……というか、おまたの間が、なんか変だ。
まるで、そこになにかがあるかのように……
違和感の正体を確かめるべく、私は布団の中の手を、動かす。手を伸ばすその先は、違和感を感じる下半身だ。
自分で言うのもなんだが、私は平たんな身体だ。だから、たとえば胸に手を伸ばしても山のようなおっぱいに手が触れるとか、そんなことはない。
女性らしい身体とは言えない。ただ、一応女だし下半身に手を伸ばしたところで、なにもない。
……なにもない、はずだった。
「んー……?」
……なんだ、これ。手のひらになにか、当たった……当たったぞ? ズボン越しに……なんだ? なにか膨らんでる?
寝ぼけた頭では、それがなにかという関心が大きかったのか、触れたそれを軽く"握った"。
きゅ
「…………んん?」
握った……そう、握ったのだ。……なにを?
おかしい……私の身体は、悔しいが平たい。いや、たとえ平たくなくてもだ……私の身体で、下半身に握れる場所なんてない。
握れるという行為が、できることがそもそもおかしいのだ。
そこでようやく、私の頭は働き始める。なにかが、おかしい……なにかある……いや、ついている……?
私は、それを握っているのとは逆の手で、ゆっくりと布団を捲り上げる。視線は、布団の中……自分の、下半身だ。
その先にあるのは、なにかを握っている私の手……なにかを、握っている。
ゆっくり、手を離す。すると、ようやく異変を、察知した。してしまった。
……ズボンが、不自然に盛り上がっているのだ。私の手は、ズボンを不自然に盛り上げていたなにかを、握っていたということで……
「…………うそ」
下半身……というかおまたの違和感。なぜか握れるなにか。……いや、ナニか。
とたんに、私の脳は理解を始める……同時に、それはどうしても理解できないものでもあった。
だって、だって、これ、って…………!?
「……生え……?」
そっと、ズボンの中に手を突っ込んだ。触った。握った。固かった。あった。
……あった。
ズボンを捲り上げて、中身を確認する。あった
……あった。
「……生えちゃっ……た……?」
自分でも訳のわからないうちに、そんな言葉が出ていた。生えっちゃった……なにが? ……ナニが。
軽く、にぎにぎしてみる。弾力がある。それに、ちゃんと握られた感覚がある。
……間違いない、これは私から生えている、私の一部だ。
ゆっくりと、布団から起き上がる。ズボンをずらし、ソレを見る。間違いなく、生えている。
これは、なんだろう……と、そこまで無知な私ではない。これはあれだ、師匠の下半身に生えていたものだ。
小さな頃、お風呂上がりの師匠の下半身にあるそれを見て、なんだそれはと聞いたことがある。師匠は笑いながら、男にしかないものだ、と教えてくれたっけ。
つまり……これはそう、男にしかないものなんだ。
「……なんで?」
少なくとも、昨日まで私についていたものではない。
これは、夢だろうか。いや、この手触りは夢とは思えない。ちゃんと触ってる感覚があるし、ちょっとあったかいし……なんか、触ってるうちに固くなってきたし。
問題は、なんでこんなものが、私に生えたのか。……いや、これってそういうものなのだろうか?
師匠はああ言っていたけど、実は女の子も、いずれ生えてくるものだったりして。うん、あり得る。
そうだよ、そう考えるほうが自然だ。今まで私は師匠としか暮らしてなかったんだし、女の子の体の構造のことはわからない。
「もしかしたら、ノマちゃんにも……」
「私がどうかしましたの?」
「わひゃお!?」
突然聞こえた声に、私は間抜けな声を出してしまう。とっさにソレから手を離し、自分の下半身を隠すように布団を被る。
視線を向けた先には、目を擦りながら私を見ている、同室のノマちゃんがいた。
「ののの、ノマちゃ……どどど、どうし……」
「フィールドさんこそどうしましたの」
……ノマ・エーテンちゃん。魔導学園のこの女子寮で、私と部屋が一緒の女の子だ。
普段は、二段ベッドの上を私は使わせてもらっている。なので、ノマちゃんは下から登ってきた形だ。
騒がしくしてしまっただろうか。寝ていたのに、起こしてしまった……悪いことをしたかな。
寝ぼけ眼のノマちゃんは、さっきの私の行動を見ていなかったようだ。ズボンの中に手を突っ込んでいるなんて、絶対なにをしていたか聞かれるよな。
……いや、今がチャンスじゃないかな? これは、女の子にも生えるものだとしたら……ノマちゃんにも生えているんじゃないのか。そうでなくても、これはなんなのかノマちゃんなら知っているかもしれない。
これがなんで男にしか付いていないと師匠が言ったのか、その謎が解けるかもしれない。それが嘘か、本当かも。
そうだよ、いきなりのノマちゃん登場に驚いちゃったけど、これを聞くのに絶好の機会だ。
軽く深呼吸。ノマちゃんに、話を聞こうと改めて視線を向けて……
「なっ……!?」
「?」
眠たげに目を擦るノマちゃん……普段ドリルのように巻いている金色の髪は、ストレートに下ろされている。
それだけではない。はしごを使ってベッドの二階に登ってきているため、見えているのはノマちゃんの上半身のみ……その大きな膨らみが、ベッドのシーツの上に乗せられている。
夜寝ていたので当然パジャマなわけだが、ボタンで前を閉めるタイプ。にも関わらず、ノマちゃんは上から三個ほどボタンを開けている。
そのおかげで、白くて大きなお山が、その谷間を私に見せつけるようになっている。
「か、か……!」
なんだ、この気持ちは……いつもなら、こんなだらしない格好にドキドキすることはない。むしろ、いつもいつも見せつけやがってこの野郎もぐぞ、くらい思っているはずだ。
それが、なんでこんなに……え、ドキドキしているのか? 私は。
それに……お股の、その、アレが……なんか、変だ。
「フィールドさぁん?」
「! そ、そんな格好! は、ハレンチですわ!」
「ですわ?」
あぁあぁ、どうしようどうしよう。どうしたの私。
ノマちゃんのこんな姿、いつも見ているじゃないか。なのに、なのに……!?
「フィールドさん、さっきから変ですわよ。
それに、なんだか不自然に布団を押さえてません?」
「そそ、そんなことないから! とりあえず、下に降りて! ね!」
おかしいぞ私。今の話の流れ、完全にいけたじゃないか。実は布団の下には……と、生えちゃったアレを見せて、原因を探るっていう。できたはずだ。
なのに、とっさにごまかしてしまった。それどころか……
私、これを見られるの、恥ずかしいと思ってる……?
「? もしや、布団の中になにかを隠して……」
「ら、らめー!
ほ、ほんとになんでもないから、ね?」
私の拒絶に、ノマちゃんは不服そうな表情を浮かべつつ、ベッドを降りていった。
ごめん、ノマちゃん! でも、なんかほんとにまずいんだ! こんなの、見せられないし誰にも相談もできないよ!
……ちょっと待って。ってことは私、今日ずっとこの状態で過ごさないといけない……ってこと!?
「か、勘弁してよ……」
誰に言うでもなく、私は一人、膝を抱えて声を押し殺していた。
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