第267話 再スタートの部屋
さてさて、無事……と言っていいのか、ともかく私とコロニアちゃんは魔導学園に戻ってきた。新たに、ノマちゃんを加えて。
ノマちゃんにとっては、久しぶりの学園だ。数日の話ではあるんだけど、入学してからずっとここに通っていたし、敷地内の寮に住んでいた。
「はぁー、早く皆さんに会いたいですわ!」
「そうだねー」
ノマちゃんも、みんなに会いたくて仕方ないようだ。
クレアちゃんにルリーちゃん、ナタリアちゃん……他にも、クラスの友達もいるだろう。
とりあえず、ノマちゃんが今日寮に戻ることは先生たちやゴルさんたちには知らされているらしいけど、学園に復帰すると生徒たちに知らされるのは明日みたいだ。
なので今日は、これから私と一緒に、新しい部屋に行く……いや帰ることになる。
「新しい部屋ですかぁ、どんな感じですかね」
「うーん、新しいって言っても、寮の部屋って基本おんなじ内装だからね。別に、変わり映えはしないと思うよ」
「でも、やっぱり新しい部屋ってわくわくするよねー」
三人で、女子寮に向かって歩く。新しい部屋というのは、まだ私も見せてもらっていない。
せっかくだから、ノマちゃんと一緒に見たいと思っていたからだ。
そういえば、荷物とか……前の部屋にあったもので、移さないといけないものもあると思うけど。まあそのあたりは、なんかうまい具合やってくれてるんだろうと思うけど……
「……コロニアちゃん?」
「ん?」
私は立ち止まって、振り返った。同じく、コロニアちゃんも立ち止まる。
当然のように、コロニアちゃんがいたのだ。
「いや、もうコロニアちゃんが着いてくる必要はないっていうか……」
「ジャマー?」
「そうは言ってないけど……」
学園に戻ってからも、なぜかコロニアちゃんは着いてくる。とはいえ、それが邪魔というわけでは断じてない。
なぜか、私たちの新しい部屋に興味津々だ。下手したら、私とノマちゃんよりワクワクしている。
別に邪魔じゃあないので、結局このまま着いてくることに。
「あぁ、懐かしき女子寮!」
「部屋は確か、こっちかな」
そびえ立つの女子寮を見て、ノマちゃんは嬉しそうだ。その姿を横目で収めつつ、私は聞いていた部屋の場所を思い出す。
確か、こっちだったな。前の部屋と、結構離れるなぁ。
しばらく歩いて、階段を上ったり下りたりして、やがて一つの扉の前にたどり着いた。
「よし、ここだ!」
「ここですかぁ」
「わくわくー」
ここが、新しい部屋だ。新しい部屋と言っても、新しく部屋を作ったわけではなく、要は余り物部屋みたいなもんだ。
ただ、これは私たちにとっても都合がいいものだ。部屋を新しく用意するならそれなりに時間はかかるけど、元々空き部屋ならそこまで時間はかからない。
それにしても、この学園には結構な数の生徒がいるのに、いくら二人一組で一部屋とはいえ、それでも余るなんて……ホント大きいよなぁこの寮。
なんて少し感心しながらも、扉のノブに手を伸ばし、開いていく。
扉を開けると、そこには……
「おぉー」
一瞬、あのときの光景がフラッシュバックしそうになってしまった。扉を開け、いつもならノマちゃんが明るく迎え入れてくれる……
でもそんなことはなくて、暗くて、冷たくて……部屋の奥では、血にまみれたノマちゃんが倒れていて。
けれど、新しい部屋ではそんなことあるはずもなく。そこはまるで新品同然で、初めて前の部屋に入ったときと同じような感覚が広がっていた。
「新しい部屋……やっぱり、中身はそう変わりませんわね」
「あはははー」
一瞬目を輝かせたノマちゃんだったけど、部屋の内装に冷静になる。
わかっていたことだけど、前の部屋とほとんど同じということで、目新しさはあんまりない。
それでも、私たちのために新しい部屋を用意してくれたのは、嬉しいけどね。
「今日からここが、私たちの新しい部屋だよ!」
「間違って、前の部屋に戻らないようにしないといけませんわね」
この部屋に早く慣れないと。人間、慣れたものには無意識に体が動いてしまうものだ。
ぼーっとしてたら、この部屋じゃなくて前の部屋に足が向いてしまいそうだ。この部屋と前の部屋の距離はそこそこあるから、間違えてしまったら大変だ。
ちなみに、前の部屋は調査は終わったとはいえ、まだ中には入れないようになっているみたいだ。部屋の中はきれいにしても、だからもう使って大丈夫ですよ、ってわけではないからね。
まあ、わざわざ入ろうって人はいないと思うけど。
「わ、いろいろ揃えてくれてるんだ」
「私たちの私物を移せばいいだけですわね」
部屋には、すでに備え付けの家具が用意されていた。あとはここに、私たちの私物を持ってくれば完了だ。
まあ私物といっても、そこまで量があるわけでもないんだけどね。貴重品は肌見放さず持ってたし。
まあ、それも学園の人が回収してくれているから、そのうち持ってきてくれるだろう。
「……」
「どうしたの、コロニアちゃん」
なんか、急に黙ってしまったコロニアちゃん。その様子を不思議に思って、私は問いかける。
「いや……私は、後から話を聞いただけだから、あんまり気持ちは伝わらないかもしれないけどさ。
二人が無事で、よかったなって」
「……コロニアちゃん」
こうして、二人揃って、また一緒に部屋で暮らせて、一緒に学園に通える。当たり前のようでいたことが、とても充実していたことなんだなと感じた。
それに、そう思ってくれる人がいて、胸の奥が熱くなるのを感じた。
いろいろなことがあったけど……ノマちゃんとの学園生活は、ここから再スタートだ!
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