第260話 生徒会副顧問
先生が結婚している問題に少しばかりの衝撃を受けていた私。先生には少しばかり失礼な話だろうけど。
まあ、見た分には美人だもんな。男勝りな性格も、一つの個性だし。好きな人は好きそう。
「どうしたフィールド、私をじっと見て」
「あ、いや別に」
つい先生のことをガン見してしまっていた。いけないいけない。
先生が結婚していることもそうだけど、元は平民だってこともちょっと驚きだな。なんていうか、気品に溢れているから。
元は平民でも、魔導学園で教師の立場にいる……本当に実力主義なんだろうなぁこの学園は。
「だからまあ、昔接点があった縁で、こいつを推薦したんだよ。といっても、いきなり教師にはなれないから、教育実習って形になってな」
「ホントホント、ヒルヤセンセには感謝感謝だよ」
「だからセンセやめろ。その言い方バカにしてるだろ」
先生が、ウーラスト先生を教師に推薦した……のか。
そのときのことは見てないからわからないけど、きっとすんなりとはいかなかったんだろう。だって、言い方はよくないけど、エルフだから。
でも、今はちゃんと、受け入れられている。それに……
先生とウーラスト先生、人間とエルフ……二人が仲良くしているのを見ると、なんか、いいなって思う。
師匠を除けば、私はエルフを見たのはウーラスト先生が初めてだ。他はダークエルフばかりだったし、この国にはそもそもエルフがいない。
だから……みんなから敬遠されているエルフと、人間が仲良くしているのは、なんか……いい!
「エルフは、まあいろいろ言われているが……少なくとも、私はウーラストという個人を知っている。こいつの知識や技術は、お前たちのためになると思った。
それに、お前たちにも実際にエルフに触れてもらえば、いろいろな見方も変わると思ってな」
先生は、エルフに関して悪い印象を抱いていない。ううん、ウーラスト先生という個人を知っているから、エルフは世間で言われるほど悪い人ばかりじゃないというのを知っている。
それを、みんなにも知ってほしい。それが先生の願いか。
口は悪いときもあるけど、やっぱりいい人だ。
その後、言霊とまではいかなくても、より魔力を身近に感じるための授業を、ウーラスト先生から受けた。はじめはふざけた喋り方だと思っていたけど、慣れてみるとそうでもない。
「言霊は、魔術に近い。自分の魔力じゃなく、大気の魔力を感じて、言葉に魔力を乗せるんだ。まずは、あらゆるところに流れている魔力を感じることから始めてみて。
魔術を使える子は、触りはもう捉えてる。そうでない子も、きっかけを作れるように頑張ろう」
魔力はあらゆるところに流れている。大気中にある魔力は、室外だろうと室内だろうと、空気のように当たり前にそこにある。
それを感じることが、まずは一歩目だという。
私はもう魔術を使えるから、魔力の流れを掴むコツはわかっている。けれど、言葉に魔力を乗せるってのが……どうにもなぁ。わからん。
「ま、今日明日できるもんでもない。気長にやっていこう。それが授業なんだから」
先生の話だと、ウーラスト先生は今日は一日このクラスにいるけど、明日からは他のクラス、学年にも行くらしい。
エルフの教員というのは貴重だもんな。生徒の力を伸ばす学園な以上、誰にも公平に学べる機会がないとね。
こうして、エルフ新教師着任という、激動の一日が終わっていく……
「やぁやぁ、さっきぶり」
「……なんでいるんですか」
放課後、私は生徒会室にいた。学園が再開したばかりで、いろいろと話すことやることがあるのだという。
クレアちゃんたちとのお茶会、ダルマスとの訓練、やりたいことはあったけど、最優先はこっちだから仕方ない。
で、生徒会室の扉を開けると……すでに教室の中に、生徒会会長であるゴルさんを始め、タメリア先輩、メメメリ先輩、リリアーナ先輩、そしてシルフィ先輩と、いつのメンバーがいるんだけど……
その中に、なぜかウーラスト先生がいた。
「来たかエラン」
「えぇっとぉ……これはいったい? なんでウーラスト先生が?」
「どもども、今日からこの生徒会の副顧問になったウーラストでぇす」
「……」
なぜか、ウーラスト先生がいた。
見間違いではないな、うん。
「生徒会には今まで副顧問がいなかったからな。それを、ウーラスト先生が引き受けてくれたわけだ」
「え、まるで生徒会に顧問はいたみたいな言い方ですね」
「……めったに顔を出さないが、いる」
ここに来てまたも衝撃の事実。生徒会に顧問の先生がいたのだという事実。
考えてみれば、そりゃそうなんだけど……私、会ったことないよ。
ゴルさん曰く、めったに顔を出さない先生らしい。魔導学園では生徒の自主性を重んじるから、問題ないってことなのかな。
いやでも、それはそれでどうなのよ。私生徒会の一員よ?
で、この度新しく着任したウーラスト先生が、生徒会の副顧問を受け入れた、と。なんか教育実習生ってそこまでやるもんなのかとは思うけど、別にいっか。
「いやぁ、エルフの教師なんて新鮮だなぁ。なんか楽しくなりそう」
と、タメリア先輩はこの中で一番ウキウキしている。エルフに対して、思うところはないってことか。
メメメリ先輩も受け入れているようだし、リリアーナ先輩もゴルさんが受け入れているなら文句はなさそう。
問題は……
「……」
いつも無表情で、なに考えているのかよくわからないシルフィ先輩が、なに考えているのか、だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます