ミノルはアフリカに行くことにした

@horohoro_novel

第1話:アフリカ生活は突然に

どうもミノルです。今、アフリカにいます。

大学卒業後「やばっ!就職のこと何も考えてなかった!」と焦る→電車の中吊り広告に書いてあった「世界は君を待っている」というフレーズにKO→アフリカ行きのボランティアプログラムに参加、という流れ。渡航費も生活費も全部出て、帰ったときにお金が数百万貯まるって噂を信じて突入してみた感じ。


応募の際「アフリカに派遣されることになっても大丈夫?」と面接官のオジさんに聞かれたけど、言ってやったよ「あたり前田のクラッカーですよ!ぜひ!」ってね。

全然笑ってなかったけど、あれが採用の決め手になったんだと俺は思ってる。ノリだけで人生なんとかしてきたから、ノリの良さだけは面接で伝えようって思ってたからね。


アフリカへ行く前、1ヵ月訓練があった、日本で。100人ぐらいが共同生活して、それぞれ派遣される国の勉強を1日中する感じ。俺の行く国は英語圏だったからよかったけど、アラブ語圏に行く人達は大変そうだった。1ヵ月でアラブ語話せるようになるのか疑問だし、そもそもアラブ語を覚えようと自分だったら思えない。


そうそう、訓練では同じ国に行く日本人とも仲良くなった。俺のほかに3人いたんだけど、なかでもIT企業を辞めて参加してたダイゴさんとは気が合って、よくつるんでた。

「ミノル、アフリカに行く前に俺は日本でやり残したことをやりきるぞ!」

「ほえ?なんすかそれ?」

「LINE漫画にある無料マンガをすべて読むことだ」

「あー漫画アプリのやつですね。でもあれって、無料だと全巻読めないんじゃ……」

「途中までしか読めないからいいんだよ。芥川龍之介の『芋粥』って読んだことないか?満たされると人は逆に不幸になっちゃうんだよ」

「ほえ?」

まあ、こんな感じで時々よくわからないことを言ってくるけど、イケメンで物知りだからダイゴさんは頼りになる。


一緒に派遣される仲間の3人の内、1番仲の悪いのが美子(みこ)さん。外資系のコンサルティングファームに勤めていたらしく、頭がキレッキレ。新卒でプログラムに参加した俺をバカにしていて

「ミノル、あんた社会人経験なしでアフリカ行って、何ができると思ってるの?大学で学んだことなんて、実社会で何の役にも立たないんだからね」

と鋭い言葉の刃をしょっちゅう俺にぶつけてくる。


これでもかってくらい俺には強気で来るんだけど、なぜかダイゴさんには猫なで声。謎だ。

「ダイゴ君〜。講義終わったら飲みに行かない?相談に乗ってほしいことがあるんだけど」

訓練中、何度この誘いを耳にしたかなぁ。そしてダイゴさんからのワンパターンな返答も。

「ごめん!今日も部屋に引きこもって朝までLINE漫画読む!代わりにミノルを誘ってやってくれ」

そして美子さんは不機嫌になる。ちなみに、美子さんが俺を飲みに誘ったことは一度もない。繰り返す、一度もない。


とまぁ、こんな感じで1ヶ月過ごし、訓練終わって2ヶ月後にはアフリカ生活が始まった。


ノリから始まったアフリカ生活が俺の人生を一変させるとは、そのときの俺には想像できなかった……と言っておけば続きそうなので、言ってみた。

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