第3話「大根役者」~名脇役の金之助と立役者のカズヒロ~
『冒険劇団』
シーン3「大根役者」~名脇役の金之助と立役者のカズヒロ~
金之助「肩をあっためる…って野球の試合かよ!」
カズヒロ「え?草野球の監督が間違って来てらっしゃる?」
岸田「そうそれそれ👍」
カーチャ&ナガト「ははははは!」
ツキタ「それではみなさん今日一日よろしくお願いいたします!」
撮影陣・出演者「おー!」
プレイボールの第一声と頭のなかでサイレンが鳴る合図がした、ボールもグローブも持ってないけど、これから僕たちの熱い試合が始まりそうだ
岸田「じゃあツキタくん試合開始ということで、手始めに最初のシーンの役者の配置や芝居とか簡単な説明から入ってね、じゃあ僕は撮影スタッフさんと準備してるから段取りはよろしく」
ツキタ「はい!ではまず背景は、ソフトクリーム屋を背にして日本の学生たちが恐る恐る外国人に声をかけて売り込むシーンです、外国人のエキストラを呼んでますので、そちらの方には一通り説明しましたが、念のため聞いてください(翻訳者のマキコさん:Please one more, check…」
ツキタ「シナリオはだいたい飲み込めましたか?じゃあ裏で岸田さんが撮影スタッフを動かしてくれたので、セットアップ完了してます?OK?」
岸田と撮影スタッフ「👍」
ツキタ「はいオッケーですね!それでは役者とエキストラの方は手順通り位置についていただいて演技開始になります、よろしくお願いいたします!」
役者&エキストラ「「よろしくお願いしまーす」」
ナガト「あれ?あんな子役の女の子いたっけ?」
カーチャ「さあ、エキストラとして呼ばれた外国人では?」
ナガト「すごくきれい…私と代わってもいいかも」
アヅマ「主役はナガトさんです、しっかりしてください、衣装合わせ問題ないです!」
パー子「何を呆けたことを言うとんじ
ゃ、しっかりせい」きゅっ!とリボンを結ぶ
ナガト「うっ!首が…カーチャ、あのスカートもきつくない?」
カーチャ「緊張してガチガチに固そうな学生って感じですね、私はやせ形なので問題ないです」
ナガト「そうかなぁ…もしかして太ってる?はは…」
パー子「あ、ヤバイ、あいつらの服…逆かもしれん」
アヅマ「ひょ!?じゃあ言った方が」
パー子「やめい!こういうのはあれじゃ、アドリブじゃ!わかる直感でなにか起こる予感が…」
外国人A「お嬢さん?顔色悪いが大丈夫かい?」
学生役ナガト「あ、いえ!へえそれってサーフボードですよね!サーファーなんですねー、すごい筋肉です!」
学生役カーチャ「そうじゃなくて、ソフトクリームいかが~ですよ?」
外国人B「HAHA、二人にナンパされてるぞお前笑」
外国人A「からかうのはよせよ、ジャパニーズガールとロシアンガールのダブルプロポーズは嬉しいが、そのアズキソーダ?というのはなんだい?」
ビリビリっと嫌な音がした
学生役ナガト「きつい…息が…」
学生役カーチャ「なんか変な音?がしませんでした?」
学生役ナガト「え?なにが?それよりソフトクリーム早く出さないと…あれ?」
「あれ?あれれ!?あええええ!?」
びちゃびちゃ…と白い汁が垂れていた
持っていたコーンから勢いよく出た汁が跳ねてしまい、エプロンスカートがソフトクリームだった白濁の液で、ずぶぬれだ
カーチャ「なにナガト?まあ大変!」
カーチャ「溶けたクリームしか出ない、あの電源確認した?」
ヴィーナスみたいだ、熱くて博物館から海水浴に来たらしい…」
外国人A「おいおい?なんの冗談…Wow」
カーチャ「ちょっとスカートが破れて!パンツ!パンツ!」
え?とした顔でポカーンとするナガト
外国人A「お嬢ちゃん全身真っ白じゃないか!?」
外国人B「よかったな兄弟、彼女がご注文のソフトクリームみたいだぜ!」
パァンと頭を叩く
外国人A「へいマイク、ちょっといいか?(叩いてすまない、こんなの台本にあったか?)」
外国人B「な、なんだよフランク?(俺もこんなの知らない、一応は合わせたほうがいいだろ?カメラ回ってんだぞ?)」
ナガト「クリームこぼすし…昨日作ったアズキソーダは売れなかったし…外国人に笑われるし…もういやだ…かえる…」※伏線1
カーチャ「大丈夫、あの人たちも待ってくれてるから、ほら早く着替えましょう」
ナガト「ふええええん!いやだ、おかあさあああん、もうかえる!」
カーチャ「泣かないで…まだ初日でしょ?(もうこんなの演技じゃない、監督を呼ばないと…)」※伏線2
パー子「ごめんなさいなのじゃ…すみませんじゃすみせんのじゃ…」
アヅマ「パー子は悪くないです!私のせいですう!」
ツキタ「岸田さん…これはどうすれば…」
岸田「いいから、役者を信じろ、まわせまわせ👍」
カーチャ「(止めない?演技続行ってこと?監督は何を求めてるの?)ナガトさん、ひとまず落ち着いて、あとは私がやるから…」
カメラはそれでも回る
外国人B「(撮影続行か?よし!)、へいジュリエット、ロミオが恋しがってる、アイスはまだかってさ!」
外国人A「(撮影初日からミスはまずいが、それよりあの子が心配だ…)、相方がすまないな、アメリカは自由の国、こんなハプニングくらい日常茶飯事だ、お嬢さん気にしないで」
ナガト「ほんと?こんな私でもアメリカは歓迎してくれる?」
外国人B「ああ、この国はミロのヴィーナスもハプニングも大歓迎だぜ」
外国人A「そういうことだ、この際は何でも良い、なんか買わせてくれないか?」
カーチャ「(どうしよう初日からアドリブなんて…)え?ええ…わかりました…コーンだけでもせめて出しましょう…」
ナガト「待ってカーチャ、ぐすんっ、在庫に失敗したアイスなかった?」
カーチャ「あれは見た目が悪かったから全部捨てたんじゃなかったの?」
ナガト「置いてる、母さんから食べ物は粗末にしちゃいけないって教えられたから捨てれなかったの」
カーチャ「立てる?スカートが…」
ナガト「うん、良い感じの水着と思えば慣れてきた」
ぎゅっと破れたスカートをくくって締める
外国人A「真珠のように綺麗な足だ、怪我してなくて本当によかった」
外国人B「まったくだ、真珠は日本の宝だからな」
ナガト「ありがとうサーファーさんと気前の良いお兄さん、もうちょっと待っててね、カーチャ、スプーンとかある?」
カーチャ「ええ、これをどうするの?」
ナガト「こうするの!」
ナガト&カーチャ「お待たせしましたー!アズキソーダアイスクリームです!」
パクパク…
外国人A「見た目はあれだが、なんだこの触感は…!」
外国人B「コーンと意外と合うな、こんなの初めて食べるぜ、お前らも食えよ」
少年C「…なんだこれ?トルコアイス?」
少女D「色も味も触感も初めて、これってJapanの餅ってやつじゃないの?」
その後、アズキソーダが売れに売れた、日本人の学生たちのソフトクリーム屋の新商品は大盛況だった、あと撮影初日もミスをうまく乗りきった
ツキタ監督
「アズキソーダのシーンすごくよかったよ!」
カーチャ「次ミスしたら、主役代わってもいいのよ?」
ナガト「ひい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
金之助「気にすんなって、サーファーはこんなハプニングくらい乗りこなすさ、なあフランク?」
カズヒロ「おいマイク、カメラはもう回ってないぞ?」
ナガト・出演者・撮影陣「あはははは!」
観光客の中に黒く光る何かに気が付いたナガトと気になって声を掛けるカーチャ
カーチャ「どうしましたかナガト?」
ナガト「あれ、現場入りで見たあの子、出てたっけ?」
カーチャ「あの子?ただの観光客だったんじゃないのでしょうか?」
ナガト「真珠の中にあるブラックパールみたいな…オーラというか気品があったけど、うーん、そうだね現地の子かも…」
カーチャ「ブラックパール?日本の諺ですか?」
ナガト「違う違う!なんか恥ずかしいこと言っちゃった!ごめん…」
カチューシャ「じゃあ、次行きましょうかナガト?」
ナガト「…うん」
撮影後のモニターチェックをする引退役者の岸田とツキタ監督
岸田「カチューシャは初日から、ナガトは昨日から、やっぱここカットだな」
ツキタ「え、ナガトさんの台詞ですか?」
岸田「違うカチューシャだ」
ツキタ「でも撮影は初日からじゃ…」
岸田「ナガトのなかでは空港から降りて時差遅れで、昨日からソフトクリーム屋を準備してんだ、わかるか?」
ツキタ「つまり、あの子はロケが始まる前の現地についた時点で、主役の子になりきっていた?」
岸田「そういうことだ、こういうやつは俺は100人に一人は見たことある、天性のタイプだ」
ツキタ「天性のタイプ?あの子が?」
岸田「あれは演技から出るものじゃない…カチューシャのシーンの初日は明らかに撮影初日を指してる台詞だ、アドバイスしてやれ、カメラ回ってないとこでも役になりきれってな」
ツキタ「はい…わかりました」
つづく
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