第13話


「私たちって通常スキル、何でも使えるよね? じゃあ、その「反射」っていうスキル、私たちも使えるんじゃない?」


アテネが何かをひらめいたような顔で言う。


「はっ…。確かに。」


なるほど。俺も対魔人戦のときに敵の通常スキルを使ったっけな。


「使ってみるか。「反射」」


俺は反射を使ってみると、


「うおっ。お前、何をした!?」


セクメトは突然ダメージを受け、驚いた顔をしている。


「お前のスキルを使わせてもらっただけだ。」


「なんだと。俺のスキルをまねしたとでもいうのか?」


「そうだといったら?」


「なら殺すまで。」


そう言い、セクメトはこちらに向かってきた。


「つっ。」


セクメトは地味な攻撃をしてくる。


「俺はこのスキルをずっと使ってるんだ。どれぐらいの強さなら発動するかぐらいは分かる。じわじわ殺してやってやるよ。」


1回1回の攻撃は強くないんだが、少しずつHPを奪われていく。セクメトのMPがなくなるのが早いか俺たちのHPがなくなるのが早いか。なかなかいい勝負だな。


「なかなかやるな。」


「強がってるんじゃないか。」


ここまで一進一退の攻防が続いてるな。俺もセクメトも決め手に欠けてる。もう、時間との勝負になりそうだ。あいつの残りMPを見てみると、もう後200ほどしか残っていない。


「あと2分ほどであいつは弱体化します。」


「あと、2分、ですか…。きついですね。」


アレスもセルスもディホンももう限界が近そうだ。


「なら、最終手段に出るか。」


俺はそういうと、セクメトに対し強力な攻撃を与えていく。だが、反射のスキルによってこちらに跳ね返ってくる。


「ぐふっ。」


だがこの攻撃により、セクメトのMPが残り100ほどになっている。


「あと1分だ。」


俺たちはギリギリのところでおよそ1分耐えた。すると突然、セクメトのオーラが収縮した。


「いまだっ。」


俺たちが攻撃しようとすると、セクメトはこちらを見てニヤリと笑ったような気がした。


(…ん?あいつ、今笑った?)


すると、セクメトのオーラが一瞬元に戻った。


「よけてっ!」


俺はそういうも、セクメトの攻撃のほうが早かった。


「ぐおっ。」


俺はギリギリセクメトの攻撃を受け止めた。だが、俺のMPもあと少ししかない…と思う。セクメトも魔王覇気がなくなったからとはいえ、十分強い。俺だけでは倒せるか不安だ。


「アテネ!まだ行けるか?」


「ギリギリ大丈夫。でも早めに終わらせないとアレスが。さっきの攻撃でだいぶHPが削られちゃってる。あと5分も持たないかも。」


タイムリミットは5分か。


「いくぞっ。」


俺とアテネは初めから全力で攻撃する。だがなかなかセクメトの防御力も高い。数度攻撃すると、セクメトのHPはあと20ほどになっていた。


「これで終わりだ。」


俺がセクメトにとどめを刺そうとすると、突然洞窟の入口の方からセクメトとは比べ物にならないほどのオーラが近づいてきた。


「くっ。」


このオーラは何だ?強すぎて動けない。だんだんとそのオーラが近づいてくる。


「君たちがセクメトを瀕死にした奴らか。なかなか見どころがあるじゃないか。私の部下にならないか?」


そのオーラの持ち主は魔族だった。


「…お前は誰だ?」


俺は力を振り絞ってそう聞いた。


「私か?私はこいつの上司のラーだ。お前ら人族には魔神と呼ばれているらしいな。」


こいつが魔神なのか?全く勝てる気がしない。歯向かってはいけないという雰囲気を醸し出している。


「まあいい。こいつだけ回収させてもらうぞ。まだこいつを失うには惜しい存在だからな。」


彼女はそういいセクメトの首根っこをつかみ、消えた。


「き、消えた!?」


あれが魔神、か…。どうやってあんなのに勝てるんだよ。ああいうのに勝たないといけないのか。それに比べて俺は魔王覇気を発動しているときのセクメトに対しても全く手が出なかった。俺もまだまだっていうわけか…。俺がそんなことを考えていると、アテネが深刻そうな顔をしていう。


「アレスのHPがもう…。出血が多すぎて…。」


「回復とかできないのか?」


「私達の力では難しい。誰かが使っているところを見ないと、新しいスキルは使えないし。」


「まじか…。」


もう、アレスは助からないってこと?まだアレスに何も教わってないのに。


「誰か!回復魔法が使えるやついないのか!」


俺は最後の希望をかけ叫ぶ。すると、ディホンが恐る恐る手を上げて言う。


「私、一応回復魔法は使えます。ですが今、MPがなく、アレスさんを回復させることは不可能です。」


「なんだと!」


僅かな希望の光が見えた。


「どれぐらいならMPは残ってるのか?」


「そうですね。軽い傷、一回分でしょうか。」


それなら俺たちは回復魔法を習得することができる。


「それだけでいい。やってくれ。」


「そこまでいうのなら、やりましょう。」


ディホンはそう言い、アレスに向かって回復魔法をかける。もちろん、アレスの傷は塞がらなかった。だかそれを見て、俺とアテネは回復魔法を習得できた。俺たちは、今取得した回復魔法をアレスに向かってかける。すると、アレスの傷は少しずつ塞がっていった。


「くっ…。」


もうさっきのセクメトとの戦いにより、俺たちはMPをたくさん消費している。なので、体の中からMPを絞り出すような感覚で、体中に痛みが走る。


「ぐふっ。」


「セルス!口から血が!」


口から何か生暖かいものが出ている気がするが気にしていられない。アレスの傷が塞がったのを見ると、安心して気が抜けたのか俺は意識を失ってしまった。

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