第10話

「ちょっと待って。どういうこと?」


「そのままの意味です。われらの種族がキメラに狙われております。このままでは我らは滅びてしまいます。そこで、助けを求めてこの森を彷徨っているときにあなた様に出会いました。あの岩竜をあのように手玉にとってしまうとは。ぜひ、われらをお助けください。」


彼女はそういいまた頭を下げた。困ったな。ワイバーンって伝説級の魔物じゃなかったっけ。そんなの俺の手に負えるわけがないだろう。


「えーと。あの俺、そんなに強くないっすよ。」


「私の目に狂いがあるわけがないのです。あなたは強いに決まっています。」


ずいぶん自分に自信があるんだな。そこまで言われるとなんか無下にできないな。


「とりあえず、仲間に相談してもいいかな?」


「ダメです。早く来てくれないと。家族が、家族が…。」


そんなうるんだ目で見られても…。やっぱりだめかも。俺こういう目には弱いんだよな。


「し、仕方ないな~。場所はどこだ?」


「ありがとうございます。あっちです。」


俺は女の子についていった。俺たちは森の中をひたすら歩いて行った。


「本当にこっちなのか?道なき道を進んでいるような感じなんだが。」


「道なき道っていいアクセントですね。これから愛用します。」


「そんなことよりこっちで会っているのか?」


「もちろんです。自分の家の方向を間違えるわけがないでしょう?」


「あ、ああ。確かにそうだな。」


なかなか言っていることは筋が通っている。頭のねじが2、3本抜けちゃっているだけでそれ以外はまともな感じだ。いわゆる残念美人ってやつか?いや美人ではないか。ちっちゃいもんな。


「もうすぐです。」


かれこれ20分近く歩いてようやく女の子の里に到着した。


「やっとか。そこそこ遠かったな。」


「そうですか?これぐらいあっという間じゃないですか?」


「おまえら、体力あるんだな。っていうかお前らそもそも何の種族なの?」


「えっ?知らなかったんですか?知っていて助けてくれたんじゃないんですか?」


「いや。違うぞ。純粋な厚意のみだ。」


下心しかないけどね。こいつ、小さくてかわいいし、妹みたいな感じだな。


「そんな誠実な方がいらっしゃったのですね。私、感激です。」


そんなキラキラした目で見られるとざ、罪悪感が…。


「それで、お前は何の種族なんだ?」


「私たちは竜人族です。」


「えっ?竜人族って、あの?」


「どの竜人族かはわかりませんがいわゆる伝説の竜人族です。」


「すげぇ。伝説がここに。」


「そんなことより早く助けてください。私たちの戦士は睡眠魔法により眠らせれてしまい誰も戦えないのです。」


「なるほど。」


俺は町のほうに進んだ。すると、


突然ワイバーンが現れ攻撃してきた。不意を突いたつもりなのかもしれないが、こちらには未来予知がある。それを難なくかわし、ワイバーンにむけて攻撃する。ワイバーンはまさかかわされるとは思っていなかったのか、まったく動けず俺の剣により絶命した。


「すごいです。さすが私の見込んだ方です。」


「これだけか?」


「いえ。まだあと30匹ほどいます。」


「へえ、30匹ね・・・ん?30匹!?」


今この娘、あと30匹いるって言ってなかった?


「ええ。30匹です。あなたなら余裕でしょう。」


30匹とか無理なんですけど。いくら何でも多すぎません?


「ふぅ。もう後には引けないか。はぁ。30匹ぐらい倒さないと、か。」


俺は街中を進む。未来感知を使って不意打ちを防ぎ、反撃をしていく。それを繰り返していった。こいつら何も学習してないな。毎回同じやられ方をしている。


「これで30匹か。」


「これで全部だと思います。でも、なんで今回はあんな頭を使ってきたのでしょう。いつもならもっと単調に攻めるのに。」


「えっ、そうなのか?いや待て、そういうことならボス、がいるかもしれないな。」


「ボス、ですか。」


「ああ。ワイバーンをまとめて、ここを攻めさせたんだ。何のためかは知らないが。」


「いわれてみればそうかもしれません。今回の襲撃はいつもよりも数が多かったですし。」


「とりあえずそいつがくるまでは何もできないな。俺は仲間を呼んでくる。お前は仲間を起こしておけ。」


「わ、わかりました。」


女の子はそういい、仲間の元へ向かていった。そして俺はアテネ立との集合場所に向かった。


俺が集合場所に到着するともう、2人は着いていた。


「セルス。遅いよ。」


「アテネ、アレス、ちょっと来て。」


「どうしたのですか?」


「森で狩りをしてたら竜人族の子と出会ったんだ。そこはワイバーンに襲われていたんだが、それがどうも怪しいんだ。ワイバーンを動かしている奴がいるかもしれない。」


「なるほど。たしかにワイバーンが何者かに従うとはありえないことですね。それこそ魔王のような強大なものでない限り。」


魔王という言葉を聞いて俺とアテネの顔が強張った。


「魔王、か」


「ええ。まあ、行かない手はないですね。もし魔王だとしても直接出て来ることはないでしょう。」


「そ、そうか。」


「そうよセルス。きっと何とかなるわよ。だって私たち、強いんだし」


アテネが笑いかけてくる。


「そうだな。俺らは強いんだし。」


俺らは竜人族の街へ向かった。

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