落ちた砂は上に帰らない

「それでは、始めて下さい」

 私は砂時計をひっくり返した。

 物理学の権威を集め、タイムマシンを実現させる方法を議論した。それぞれ自信のある意見をいくつも出したが、的を射る事の無いまま、砂は下へと落ちきった。

 分かっていた事だが辛い。

「すまない。まだ帰らないよ」

 真っ白な妻の鉢を指で撫でた。

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