第9話 毛ジラミ。
横浜にひとりの男がいた。
彼は年老いたおじさんの癖に女子大生の彼女がいて、毎日のように彼女と会い、愛し合っていた。
そんな折り、その男は仕事関係の付き合いで、中国の広州に旅をすることになる。
あんなにも愛し合っていた彼女がいるにもかかわらず、夜になると悪い仲間に誘われて、ついつい夜の女に手を出してしまった…。
日本人の男にありがちな悪い癖だ…。
ホテルの自分の部屋に一夜限り女が来る。
日本語の話せない女に対して、カタコトの英語と北京語で、偽りの愛のまねごとに精を出す。
そして、旅が終わり日本の地を踏んだ瞬間に男は広州の女を忘れていた。
日本へ戻り、翌日に女子大生の彼女の元へとみやげを手に会いに行く。
彼女は仕事関係の用事で中国へ行ったと思い、広州で女と遊んだ、などと微塵にも思っていなかった。
男のおみやげを素直に喜び、男に自分からキスをする。
そしてふたりは“愛の確認”に、燃え上がる。
さらに日は変わり、翌朝となる。
早朝に彼女から電話が入る。
「もしもし…おはよ。ねぇ、夜中から、あそこが痒くて、よくみたら、ちっちゃな虫がいるんだけど…。」
男はあわてて、彼女の部屋に向かった。
「毛ジラミ?」
彼女は男の下着を無理矢理脱がせ、股間を観察し、男にも自分と同じ虫を発見した。
「俺…気付かなかったよ。痒くなかったし…。」
彼女は怒りもせずに男に問い、男も包み隠さずに話した。
「お馬鹿なんだから…。」
「ごめん…まさか、中国から毛ジラミ連れてくるとは…。」
「遊びとはいえ…。もう、二度としちゃだめだよ。」
彼女は若いのによくできた娘だった。
男を責めずに笑って許した。
ふたりは一緒にしらみパウダーで治療しつつ、さらに愛を深めた。
「ねぇ…あんた、まだ、あのおじさんと付き合ってるの?毛ジラミまでうつされたんでしょ?」
大学の食堂で彼女の親友が訊いた。
「当たり前よ!彼って優しいし、エッチ、気持ちいいし、それに、なんでも買ってくれる。そろそろ飽きられる頃かな?って思っていたのに、毛ジラミだよぉ~。毛ジラミ、完全に退治する前にエッチしちゃえば、毛ジラミ、あっちいったりこっちに来たりしてなかなか治らない。毛ジラミいる限り他の女に手出しできないからね…。ケケケ…。」
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