ぢぢぃ回路

ぐり吉たま吉

第1話  ねぇ、おとうさん


今、どこ?


娘からのラインに、返事する。


バ~カ、教えねぇよ。


あと、15分で駅なんだけど、迎えに来る気はない?


ないね…。


お腹空いたから、なんか食べて帰ろうよ。


何でお前と外食なんだよ。


ほら、あそこのお蕎麦屋さん行こうよ。


やだね…。


じゃ、駅で待っててね。



娘をしょうがなく迎えに行く。


娘の、望み通りに蕎麦屋に入り、天ざるにカツ丼を注文する。


何が悲しくて、お前と蕎麦屋へ来なきゃいけないんだ。


たまにはいいじゃん。


お前、彼はどうした?


別れたよ、今度は同じくらいの年の人と付き合うかも…。


そっか…。


おとうさんもさぁ、年相応な人を彼女を…って思わないの?


バ~カ、年なんか関係ねぇよ。


でも、あたしより歳下って、どうなの?


あぁ、ありゃ別れた。


へぇ~。


今度は、お前よか歳上だ。


いくつ?


30なかばかな。


それだって、ひとまわり以上、歳下じゃん、まったく、見境ないんだから…。


バ~カ、お前だって、前の彼氏、16才も歳上だったじゃねぇか。


年を意識させなかったのは、あんたの教育のせいでしょ?…それに、あたしには、愛があったから、いいんだよ。


あっ!!


カツ丼、少しちょうだい。


ほらょ。



あぁ、お腹いっぱい。

残りは食べてね。


娘は、さも、当然の様に、食べ残したカツ丼と天ざるを俺の前に押し出した。



食い終わり、一緒に外に出る。

娘は俺に腕をからめ、自宅まで歩き出す。


今度の彼女は紹介できる?


あぁ…たぶんな…その内な…。


そっか…今度は愛せるといいね。



俺は、新しい女の笑顔を思い浮かべながら、生意気言う、娘のおでこを、ひとつ小突いた…。

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