アンデッド喫茶店へようこそ!
ふぃる汰@単行本発売中
第1話 無職に転生
メイド喫茶ヤミヤミ☆パニック
店長 灯乃下こごみ様
お世話になっております。転生神・リィプと申します。
君は前世のおしごと中、厄介ストーカー勘違いお客様に粘着されたメイド店員ちゃんをかばった結果、
逆上したお客様に刺されて死んじゃいました。かわいそ~笑
そんなあなたにすてきな異世界セカンドライフをお届け!
とりあえず異世界の言語理解と、数日分の生活資金を差し上げます!
職業スキルとかどうする?特に希望はない感じ?
じゃあこっちで決めちゃうね!
えーと何々、君の趣味は……ゾンビ映画、ホラー映画、ホラゲー、オカルトグッズ集め、心霊スポット巡り…
なんともまあ、陰気な趣味だなあ。まあいいや。
そんなオカルトマニアな君には死霊術師(ネクロマンサー)のスキルを授けよう!
アンデッド系のモンスターを使役できるよ! あ、使役契約の交渉は自分でがんばってね!
それじゃあ異世界ライフ楽しんでね!
神より
「なんだこれ」
ポケットに入っていた手紙を読み終わる。意味不明すぎるだろ。
いやまあ、異世界転生モノのアニメはよく見てるし、なんとなく現状を察してるが、まさか実際に体験することになるとは……。
前世の記憶も普通に残ってる。
俺の名前は灯乃下(ひのした)こごみ、25才独身男性、メイド喫茶「ヤミヤミ☆パニック」の店長兼キッチン担当。得意料理はオムライス。
店名の通り病み病みなメイドばかり。
雇われ店長の俺にバイト採用の文句は言えんのだが、もうちょっと普通の子がいてほしかった。
定期的に愚痴聞いたりなぐさめたり眠剤オーバードーズ止めたりで大変だった。俺は保護者か。
そんな感じでなかなか愉快な社畜人生を過ごしてたんだが、ある日、メイドの一人にやっかいなファンが付いてしまい、
出待ちやストーキング被害も出たんで店の子を守るために閉店後に送り迎えをしていた。
そしたら俺のことを彼氏だと思ったのか、ブチ切れたファンに包丁でグサッとやられちまった。あのくそ勘違いやろう……
そこで意識を失って、目が覚めたら全然知らない所だし、自然豊かだし、ポケットに謎の手紙が入ってるし。
「しかし異世界転生とは。これからどうすっかな……」
転生しちまったもんはしょうがない。人生これから! 切り替えてこう(脳筋運動部)。
もう閉店後にメイドさん愚痴聞き相談室という名前のサービス残業もしなくて良いし、
「わたしが寝落ちするまで電話切らないで……切ったらわたしも切っちゃうから。手首」
とか言い出す病み期に入った子と朝まで通話して毎日寝不足にもならない。
「すばらしいじゃないか! 異世界さいこう!」
とは言ったものの、目の前にあるのは海……と間違えるほどのでっかい湖。びわ湖かな? あとでっかい森。絶対トト○住んでる。
近くには村どころか人がいる気配もない。
あ、ポケットに金貨入ってる。いくらぐらいの価値なのかまったく分からないけど。
てか服装も仕事してたときのままだし……いやメイド服じゃないよ。ウェイターみたいなやつ。
神様、リィプさんだっけ? もうちょっと転生地点考えてくれよ。それかどっかの家の赤ちゃんに生まれ変わるとか。
お金あっても使えなきゃ意味ないんだが。
見た目も年齢も特に変わってない気がする。
灯乃下こごみ25才独身男性。
「元メイドカフェの雇われ店長。今は無職の異世界放浪者……」
水面に写るなんともいえない表情を浮かべる冴えない顔は、今朝出勤前に鏡で見た顔だ。
まあ幸いにも湖があるから飲み水には困らない。木でヤリとか作れば魚も採れるかも。
「とりあえず森に入って食料を探すか」
あとヤリにできそうないい感じの木も。
パリンッ!!
「……?」
森に足を踏み入れた時に何か割れたような音がした。木の枝でも踏んだかな。
「まあいいや。それではいざ、異世界探検へレッツゴー!」
このとき俺は見落としていた。森の入り口にある看板を……
【めっちゃ強いモンスター封印中! 結界があるから入れないよ!】
森に入ってしばらく経った。
しかしなんだ、魔物とかいたらどうしようかと思ったがなにも出てこないな。
「むしろずいぶん寂れた森というか、魔女でも住んでそうというか」
キノコめっちゃ生えてるし。食えるか分からないからスルーしてるけど。
「あまり奥に行き過ぎると戻れなくなりそうだな。そろそろ引き返すか……ッ!?」
ズリ……ズリ……
足音が聞こえる。
「人か? 誰か、いるのか……?」
ズリ……ズリ……
何かを引きずるような……これ、人の足音か?
ズリ……ズリ……ペタ……
いやあこれ、多分人じゃない気がする。うん。ヤバいかも。
ズリ……ペタ……ペタ……
逃げないとヤバイんだけど。身体がね……ビビッて動かない。ウケるね。
ぺた……ぺた……
「うわ~どうしようどうしよう!」
ザッ!!
「がお~!!」「お帰りなさいませご主人様!!」
……。
…………。
「「……え?」」
そこには、困惑した顔で右手を胸に当て、執事風の会釈をする成人男性と、
ガオーっと威嚇ポーズをとったまま固まる、クマっぽい耳が生えた女の子……の、ゾンビがいた。
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