大型自律人型兵器「ブラスギア」の反乱によって崩壊した世界。人類は複数の軍事企業が統治するエリアに分かれ復興を進めていた。世界を破滅に導いた「魔王」の現存する三体、ベリアル、ビュレト、アスモダイを封印から解き放ったのは、プロデューサーと名乗る謎の男だった。彼は三人にアイドルを目指さないかと持ちかけ……。
戦闘用AIをアイドルとしてスカウトするという荒唐無稽な設定が斬新です。
アイドルに相応しい美少女の姿に擬態したベリアル、ビュレト、アスモダイ。アイドルなんて概念すら初めて知る彼女らだが、超高性能AIだけに学習はお手のもの。しかし完璧なパフォーマンスを見せても観客の心には響かない。それは彼女たちが人々を楽しませようという気持ちが欠けているから。
人間よりも優れていると思っていたことが自分たちの驕りだと気づいた三人が、スラム街の飲食店で働きながら人間を学んでいく光景が微笑ましく、そこで出会う人々に応援されながらアイドルとして成長していく展開が感動的なのです。
戦争の兵器として生まれた彼女たちが今度は平和の象徴へ。新しい未来の先駆けとなって人々と喜びを分かち合うアイドルの姿が眩しいです。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)