ワンコの一生 ノラ男編

河原ジョー

第1話 ノラ男 その後


今日も気候が良いので庭に放り出された。暫く庭に出ていないと猫の臭いやイタチの臭いがする。たまらんので臭いのする所にオシッコ掛けといた。

すると隣のモンジローも同じ事していた。

目と目が合うと興奮したように何か話しかけてきた。

聞いてみるとノラ男の事だった。

アイツ、車に跳ねられて死んでもたんや!

ビックリしたけど、詳細はこうだ!

交差点で、ノラ男の反対側に子供がいて、ノラ男に気が付いたのかワンワンと言いながら道路を渡ろうとした。

その時、右折した車があって子供を轢きそうになった。

それに気が付いたノラ男は咄嗟に子供を突き飛ばした。

子供は泣き叫んだがすり傷程度で助かった。しかし、ノラ男は車に跳ね飛ばされた。

ノラ男はキャンキャンと泣き叫んだがあまりにも痛さに失神してしまった。

運転手と子供の親がビックリして駆けつけてきたが、何をしてよいか分からなかった。

後ろの方から警察と救急車やという声が聞こえたので運転手が警察、子供の親が救急車を呼んだ。

暫くしてパトカーと救急車が来たが、

救急車は、何だ犬かと言って帰ってしまった。

運転手は事情聴取で留め置かれたので、

ノラ男はほったらかされた。

すると子供のお父さんはスマホで動物病院を検索し片っ端から電話した。やっと引き受けて良い病院が見つかったので近くの人が車を出してくれた。

子供は母親に預けてノラ男を乗せて動物病院に向かった。

緊急施術をしてくれたが内臓破裂、間に合わなかった。暫くして息を引き取った。

その子の親は、子供の身代わりになってくれたノラ男を引き取り丁重に葬ってくれたそうだ。

それと同時の頃、角の雌犬、どうやらノラ男の子供を宿し五匹の子供を産んだ。どちらも柴犬の血が入ってるので見た目は柴犬だった。

雌犬の飼い主は子犬の引取先を探していたら、子供の親が、ノラ男の子供らしいと言うことを聞きつけ一匹引き取ったそうだ。

これで野良犬の連鎖は断ち切ることができた。


そうか、それは気の毒やったな。

アイツ産まれてから貧乏クジばかり引いて人間界を斜めに観て育ったから性格もねじれてたと思ってたけど結構男気あったんやな。

自由に生きて俺ら違って子孫まで残してな。

アイツの勝ちやな。


ウチら犬族のご先祖様は狼。人間が人間の都合の良いように改良されて長年付き合ってきたからアイツも心の片隅には人間が恋しい所があるんやな。俺もモンジローと言う名前やから男気では負けんと思ってたけどアイツには完敗や。アイツは犬の中の犬や。

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