ぼくのうた(戦えバージョン)

人は狼になるだろう


僕は思った


たったひとりでいることは

先鋭化してしまう


けれど尖っていることは

悲しくも

僕の武器だった


ある人は僕に言った

君はその目で、何を見てきたんだ?

その目で、その心で、その肌で、

感じていたものは一体何だったんだ?


こう言った、

世界は動いていると。

君が寝ている時も起きている時も、何をしている時でも世界は動いて、

けれど、君も動いているだろう!

他の人が笑っているとき、泣いているとき君は何をしたのか、何を得たのか、

掘り出してみせよ、って。

僕の全てを、僕の全て!

ああ、何と容赦のない!

僕は僕を全て使うべきだという。

僕の手、僕の足、僕の目、僕の頭、僕の体、僕の全体。

僕を爆発させろって、僕をぶち当てろって。

僕は戦える、っていうんだ。

さあ、戦えるっていうんだ。

僕は戦える、

違う、もっと大きな声で!

僕は戦える!

そう、君は戦える! もっと大きな声を出せ!

僕は戦える!!

もっと!!

僕は戦える!!

僕は戦える!!

僕は戦える!!

僕は、戦える!!


そのとき、僕は体が咲くのを感じた。

ポップコーンが弾けるみたいに。

これが、咲くってことなのかって。

僕は何かの物語の主人公で、「こうして彼は目覚めたのであった」と、語られたみたいに。

けれど、その感覚は一瞬だった。

羽ばたく翼は風にもがれて、僕はただそれが、僕が見せているに過ぎない幻想であると気づいた。

だが同時に、僕はもう元の場所に戻れないのだ。

羽ばたいてしまったから!

用無しの巣はもう片付けられてしまって、次の安住の地を求め旅を続けるしかないのだ!


そして、僕は知っている


世界が常に動いているように

僕の未来も決定していく


僕が羽ばたいた未来は

羽ばたかなかった未来よりちょっとだけ、良いのであった


願わくば、

僕は僕として生きていられることを


狼になることも、また良い


自分に傷をつけ、完成させてやる


未探検の森はまだあるだろう


もう少し、僕は粘っていたい

自分を沈めるナニカに、僕は負けたくない


---

2016年10月作

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