第20話 ゲームで、めっちゃお世話になりましたっ!!

 ……イスラの『貴女』の正体が、『カーネリア』だったとは。

 

 ゲームにカーネリアが出てこなかった理由は不明だが。

 カーネリアのいる、いないで行動が変わる、とイスラが言うのなら、そうなのだろう。

 イスラがその行動を取る本人なのだから。

 

 ……申し訳がなさ過ぎる。

 

 推しと推しの恋人とのきゃっきゃ、うふふとしたいちゃいちゃなラブをこっそり堪能させてほしいとは思っていたが。

 頼みの『貴女』が幼い頃のカーネリアと判明してしまっては、なんだかいろいろと申し訳がない。

 

 カーネリアの記憶を探ることができるので、今の私がカーネリアであることは所謂いわゆる異世界『転生』なのだろう、と思っていたのだが。

 残念ながら、幼い頃のカーネリアの記憶までは遡って思いだすことができない。

 

 幼すぎて覚えていない可能性もあるが、カーネリアと私が『本物のカーネリア』に憑依した何者か、である可能性が出てきてしまった。

 そういえば、カーネリアになった日に『魔よけの石』なんてものも受け取っている。

 

 ……もう一つ可能性があるとしたら、イスラがセラフィナとカーネリアを混同している、とか?

 

 私の記憶がないので、厳密な時期はわからないが。

 幼い頃に三ヶ月だけ一緒にいたカーネリアがイスラの『貴女』だとしたら、その場にセラフィナがいた可能性は捨てきれない。

 髪と目の色は違ったようだが、カーネリアとセラフィナは双子だ。

 銀髪と白髪なら勘違いするかもしれないし、顔つきがそこまで違うということもないだろう。

 

 ……連絡が取れれば、確認できるんだけど。

 

 イスラから聞くまで忘れていることすら忘れていたセラフィナだが。

 妹が処刑されている、と聞いてひどいショックを私に与えてくれたセラフィナだったが。

 

 ……ゲームで、めっちゃお世話になりましたっ!!

 

 冷静になってくると、幼い面影以上に強烈な印象を与える美少女の顔が思い浮かんでくる。

 処刑されたはずの妹セラフィナは、『ごっど★うぉーず』に登場している。

 それも、ヒロインの一人として。

 

 年齢制限エロゲーだったので、時代考証などの野暮な突っ込みは無視するが、黒いゴスロリ衣装に真珠色の髪をツインテールにした、緑の瞳のつるペタ美少女『セラフィナ』というキャラがいた。

 イスラの聞かせてくれた容姿と一致するので、間違いはないだろう。

 画面の外からはなんとも思わなかったが、黒は神の纏う色として『貴色』扱いだとイスラに教わっている。

 その『黒』を纏っていたことも、『姫』であるという示唆だったのかもしれない。

 

 この『セラフィナ』。

 一言でいうと『チート』キャラである。

 

 『ごっど★うぉーず』は雑に語ると、君主である主人公が世界征服をする物語である。

 その方法は単純で、隣接する国へと戦を仕掛け、これに勝つことで領地を広げる。

 当然、戦など主人公が個人で行えるはずはなく、ヒロインやマタイなどの仲間キャラを『将』として、その下にHPとして兵士が従っている形だ。

 

 戦闘は、戦争シーンが挟まるわけではなく、『将』が敵の将と戦うことで行われる。

 リアルな戦なら、陣形や天候、地形、戦略、武器の質なども考えなければいけないのだが、そこはゲームだ。

 勝敗はほとんど、相対時に決まる。

 というのも、『将』の持つ武器に相性があるのだ。

 ジャンケンと考えれば解りやすい。

 リアルでは必ずしもそうなるとは言えないが、『ごっど★うぉーず』ではそうだ。

 剣は弓に強く、弓は槍に強く、槍は剣に強い。

 他にも杖や飛竜といった武器種があるが、以下省略。

 要は武器の名前を冠してはいるが、ジャンケンで勝負が決まる。

 

 そしてセラフィナだ。

 なにをどうやって育ったキャラなのかは謎だが、すべての武器を扱える。

 つまり、武器の相性で勝敗が決まる戦闘に対し、後出しジャンケンが可能なのだ。

 よほど操作を間違えない限り、ほぼ負けない強キャラである。

 

 ……ゲーム時はなんでだよ、って思ってたけど。

 

 イスラにセラフィナの幼い頃の話を聞いた後ならわかる。

 父に処刑される理由となった『勝手に教師を捕まえて学んでいた』を、どういった手段をとってか処刑から逃れ、出奔した後でも続けていたのだろう。

 おそらくは、外で剣や槍の師を見つけ、学んだのだ。

 

 ……なに、その学びに貪欲すぎる姿勢。

 

 この男尊女卑の世界では、さぞ生き難いことだろう。

 そうは思うが、セラフィナはそんな世界でも好きに学び生きている。

 

 ……セラフィナ、強すぎない?

 

 ユニットとしての性能もそうだが、我が強すぎる気がした。

 

 何度でも言うが、『ごっど★うぉーず』は年齢制限エロのあるゲームだ。

 ヒロインの一人である以上、セラフィナにもそういったシーンはある。

 あるのだが、セラフィナには主人公とのベッドシーンは『無理矢理』しか存在しない。

 

 その導入も、まさかの戦闘開始である。

 

 セラフィナを手篭めにしようと主人公が勝負を挑み、勝っても負けても、以降セラフィナは主人公陣営から離脱する。

 普通に考えて、君主じょうしが自分に対して性欲を向けてくるのだ。

 私だって、そんな職場は嫌である。

 

 ……まあ、ゲームだから、みんなロードして『なかった事』にするんだけどね。

 

 セラフィナの年齢制限シーンは見たいが、離脱はされたくないのでセーブを残さない。

 そんなプレイヤーは多かっただろう。

 

 ……でも、まあ?

 

 生きているのなら、よかった。

 すっかり忘れていた妹だが、処刑されたと聞いてショックだったのだ。

 ゲーム知識ではあるが、その生存を知ることができてホッとしている。

 

 ……たぶん、直接会うことはないだろうけど。

 

 どこかで生きているのなら、それでいい。

 いつか主人公に貞操を狙われるかもしれないが、連絡が取れない以上警告も出せないので、仕方がない。

 そこは自慢の武力で乗り越えてほしい。

 

 ……お願いだから、叛乱に参加とかしないでよ?







■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


Q:なぜに黒をおめしで?


A:セラフィナ「返り血が目立たない……から?」

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