悪役転生者のワールドクラフト

南瓜の王冠

プロローグ

 …作りたい

転生して自分の状況を冷静に整理できる様になって最初に考えた事はそれだった。

そう思ったのは、自分のジョブが錬金術師と付与術師に魔術師と言う生産に向いたジョブだったからかもしれない。

……作りたい

だが、こんな覚えはないだろうか。

ゲームをして進んでるエリアをいいなあと思ったり。アニメで出て来た道具を妄想したり。いつか夢想した魔法のアイテムだったり、SCPオブジェクトの様な異常を。

例えるならコスプレイヤーと似ているかもしれない。

だが、折角作れるかもしれない力が手に入ったなら。それでも可能性が有るなら。

………作りたい

作りたいのだ。『青い猫狸ロボットのあれやそれ』を、『小説に有る様な超兵器』を、『ゲームに有る様な装備』を。

それだけじゃない、世界観や設定だってそうだ、それは幼女に鬼畜な事に定評のある会社の出した少女が夜を廻るゲームの何処か田舎っぽい夜の街並みを、小さな悪夢の名を冠する、黄色いレインコートを着た小人が行く世界の2の崩れた街並みを、現実ではあり得ない様な世界すら…

…………ああ、作りたいんだ。

時間は余り無い。

悪役として主人公達にやられる前に…

悔いが無いくらいに…

たくさん作ろう。

赤子でもスキルを鍛える事はできる。

私の記憶が正しければ、親はそれなりの貴族だったはず。

次男だけど、素材も沢山手に入るはず。

理屈は違ったって構わない。

似た様な見た目で、同じ挙動をすれば何だって良い。

だから…

だから……

たくさん…たくさん作ろう。

笑って死ねるくらいに。





……………


 3歳になって衝撃的な事実に気づいた。

親にねだって貰った離れの小屋と地下倉庫。

私だけの部屋。使える限りのスキルを使って他の誰も入れなくした場所。

倉庫の空間が拡張されてた…

そうだ…

こうすれば良いんだ…

世界を作るのは諦めていた。

方法が思いつかなかったし、場所がなかった。

空間拡張した場所、言わば裏世界は誰の場所でも無い。

それに上手くやれば望む世界を作れるかもしれない。

だが時間も技術も足りない。

如何すれば。






……………


 解決策を思いついた。

すごく簡単な事だったんだ。ヒントはマジックバックにあった。

時間を変えれば良いんだ。裏世界は異界だから時間の変化に使う魔力は少ない。

ただ、私の寿命や成長に影響を及ぼさない様にしないと。

そしたらスキルを鍛える時間も取れるはず。

何はそれぞれの世界の時間も変えよう、同じじゃきっと味気ない。

……

結果は成功したし失敗した。

最初に作ったのは1秒時間の流れを遅くし続けるのが限界だった。

何はもっと時間の流れをずらせる様にしよう。






……………

 5歳…

主人公にあった。

輝く様な金髪に竜の角に尻尾。

羽は閉まってるらしく、ちょっとボサボサの髪が愛くるしい熱血系。

あえて例えるならTSガールズラブ物の主人公の様な俺っ娘。

主な得意属性は時間と空間。

ゲームの主人公にして黄金の英雄姫。実際に竜王国の王族で次女、お姫様である。

なんでこんなお転婆に育ったのやら。

年は同年代だったはず。

運命に愛された様なチート美幼女である。

……

何で異空間で作業してる私と遭遇したかと言うと。

転移しようとしたここに着いたらしい。

余談だがここは各所に行くために私が九割趣味で作った異界列車の駅だ。

バレたら色々とヤバいのだが、国境も無視してるからな。

ま、裏世界は誰も領有権を持ってないので自由にできるのだ。

だってさあ、作りたかったんだよ。

ほら、空間を駈ける列車っていいよね…

……

何故か毎日来るので理由を聞いたら。

お前は色んな意味で心配なんだよとの事。

私のどこが…

情が湧いたら私を倒しにくいと思うがまぁいいか。

この時の私は時間の流れが違う裏世界の中で、長い時間の果て私もあいつにかなりの情が湧く事になるとは気づいてなかったんだが。


少なくてもあいつに倒されるのならいいかと思えるくらいには情が湧く。




 これはそれから外時間では10年、裏世界ではさらに膨大な時間がたった15歳からの私…

リリス・アークの物語である。なお男だ、普通のな。

まぁ基本作ったものについてだらだらとあいつ…ユーキと雑談してるだけなんだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る