思い出を乗り越えて episode friend

桜蘭

天羽司編

第1話 天羽 司

私がその二人に出会ったのは偶然だった…

進学した中学校でとても有名な二人、入学して直ぐに話が聞こえて来る位、有名な二人の先輩。


神代蓮夜先輩、柊彩音先輩…下級生の憧れの的で、上級生からの人気も凄い二人…

私とは住む世界が違う人達…そんな二人と私が知り合って、仲良くなれるなんて思ってもみなかった。

だって…中学生になった私は子供で…はっきり言って陰キャだから、クラスでも目立たない様にしていて毎日、毎日何事も無い様に過ごしていたんだから…でも…そんな私が…明るくなって人気も出て、そして…をする何て思ってもいなかった…相手は蓮夜先輩…勿論、叶わない恋…それでも、それでも私は…蓮夜先輩に恋をした。


これは、私…天羽司が神代蓮夜さんを愛する始まりのお話…


…………………………………………………………

「はぁ…後ちょっとで終われるかな…?」


放課後の教室に一人言が溢れる。

私は押し付けられた掃除を一人で熟していた…ハッキリと言えれば良いんだけど、どうしても…負けてしまうと言うか…何と言うか…眼鏡をしてるのもあって、気弱に見えるのと、余りハキハキとしてないのもあって、こう言うのを押し付けられてしまう。


「変わらないと駄目だってのは分かるんだけど…中々なぁ〜…考えても仕方無いし急ごっと!」


「あれ?お前一人で何してるんだ?」


「え…?えっと…って?!先輩?!」


声が聞こえてきて顔を上げると教室の入口から私を見てる男子が居て、その人はこの学校に通う人なら知らない人は居ない生徒の一人…全学年の女子から絶大な人気を誇る男の子。


神代蓮夜さん…が私を不思議そうな顔で見ていた。


「おう。先輩だけど、俺を知ってるの?」


「知らない人は居ないですよ…神代先輩ですよね?」


「そそっ。知らない人だって必ず居ると思うけど…それは良いや。一人で何してるんだ?」


「掃除ですよ…」


無意識に私は顔を下げてしまう。

先輩を見てるとどんどん顔が赤くなってきてるのは私も自覚していたし、普通に話してる様にしてるけど内心は大混乱してる。


「一人でか?他のは?」


少し不機嫌そうな声に変わった先輩が私に聞いてくる。


「はい…他の子は用事があるとかで…」


「チッ。イジメじゃねーか…くそ苛つく。」


「いやいや!イジメなんてそんな大袈裟な事じゃ!」


「十分にイジメだよ!何が用事だよ!掃除くらい終わらせる時間も取れない訳ねーだろ!」


「そ、それは…でも…きっと…時間が…」


私がボソボソと言い訳?みたいな事をしていると「そう…頼むわ。先にやってるからよ。」と、誰か?に連絡した先輩が教室の奥の扉から掃除用具を取り出した。


「直ぐに彩音も来るからさっさとやって帰るぞ!直ぐに暗くなるし急ごうぜ。」


「ぇ?えぇぇぇぇぇぇ?!そ、そんな良いですっば!一人で終わらせますからっ!」


てか、彩音も直ぐに来るって言ってたよね?それってさ…神代先輩だけじゃ無く柊先輩も来るって事?!あわわわ…大変な事に?!


「ほら!ボケッとしてないでやるぞ!終わらせて帰ろうぜ!」


「は、はいっ!!分かりましたぁ!!」


何か…とんでも無い事に…


…………………………………………………………

「こっちで良いの?天羽さん。」


「は、はいっ!って司で良いです!後輩ですし!」


「そう?それじゃー司って呼ぶねっ!私の事も彩音で良いから!蓮夜も蓮夜って呼んで良いからねっ!」


「おい!俺の意見は?!まぁ、良いけど…俺も司で良いか?」


「勿論です!蓮夜先輩…彩音先輩…///」


「やぁ〜んっ!照れてるぅ!可愛いっ!」


「アワワワっ///」


「いきなり抱きつくなよ。司の顔真っ赤じゃねーか。」


「だってー可愛いんだもんっ!!」


「ごめんなー、馴れ馴れしい奴でさ。何時もこんなんで…」


「いえいえっ!そんな!そんな!むしろ私なんかに時間取って貰って…すいません…」


「はーい!そう言うの無し!私達が良くて司の事送ってるんだから!後輩は黙って送られなさい!てか可愛い後輩を送るなんて先輩っぽくて良いよねっ!」


「可愛いなんて…私なんて…」


「もうっ!司は可愛いじゃん!もういい!週末は付き合って貰うからね!!!」


「?!…何故…?」


「うん、諦めろ司。こうなった彩音はもう止まらん。」


ぇぇぇぇ…何て言うかこう…深窓の令嬢みたいなイメージあったんだけど…ガシャンって音立てて崩れたよ…

彩音先輩に弄ばれながら私は自宅まで送って貰ってその日はそのまま終わるのでした。


そして…次の日…この日から私の日常は一変した…蓮夜先輩と彩音先輩の力の凄さ、影響力の強さを私は思いっきり理解する事になるのだった。


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~次の日~


昨日の帰りは楽しかったなぁ…クラスの同じ当番の子達に掃除を押し付けられたのは、何時もの事だけど、その後にまさかの蓮夜先輩と彩音先輩が手伝ってくれて、そのまま送って貰えた。

彩音先輩は、もうイメージが完全に壊れてしまって深窓の令嬢ってイメージはもう無い。

でも凄く優しくて一緒に居て楽しくて、綺麗でスタイルも良くて良い匂いで人気がある理由が良く分かった。

それに、蓮夜先輩もそう、彩音先輩に振り回されてる感じはあるのにそれを楽しんでるし、彩音先輩のハチャメチャを受け止めて一緒に盛り上げる力もあって、彩音先輩と同じ様に優しくて、何より格好良い。

お互いに信頼しあって思い合ってるのも見てて分かったしあの二人は本当にお似合いだと思った。

あれで、付き合ってないって誰が信じるのかな?って位だった。


「それに可愛いって言って貰えた…っ///」


彩音先輩からも言われたけど、蓮夜先輩からも言って貰えて凄く嬉しかったなぁ…お世辞だとしても…ね。


「おい!天羽!今日もやっとけよー私等は用事あるからねー。」


「え…今日も?」


「は?何口答えしてんの?あんたは黙って私等の言う事聞いてれば良いっての。」


「あんたと違って私等は忙しいんだよ!」


蓮夜先輩が言ってた様に掃除程度の時間を取れないほど忙しいって何…


「ちょっと!毎日毎日!押し付けてイジメやってんじゃないわよ!あんた等だけでやればいいでしょ!!!」


私と仲の良い子が庇ってくれてるけど…巻き込まれちゃうから…


「はぁ?あんたには関係ないじゃん。それともアンタが代わりにでもなる訳?私等はあんたらと違って忙しいって言ってんの!」


「へぇ…そんなに忙しいなら学校何て来なけりゃ良いんじゃね?たかが掃除程度の時間すら取れない位忙しいなら学校来てる暇もねーだろ。」


「あぁ?!誰に向か…って…」


ぇ…?蓮夜先輩…?


「そうね、教室程度の掃除の時間すら取れないなら学校来てる時間も無いわよね?何で居るの?義務教育なんだから来なくても卒業は出来るでしょ?」


彩音先輩も…?


「いや…それは…」


「あぁ?それは何だよ?聞いてやるから言ってみろや。」


私に押し付けて来てた子達が真っ青になりながら、でも…だって…って言い訳も思いつかない状態になってる。


「チッ。てめーらよ、今日からずっと掃除してから帰れや。司に押し付けてんじゃねーよ。司は気にせずに帰れ。手伝う事ねーよ。」


「そうね。今まで押し付けてた分、やるのが当然ね。やるわよね?」


「はぃ…やります…」


「分かりました…」


「つか、他にやる事あるんじゃね?お前らさ。」


「えっと…その…」


「司に土・下・座。今までイジメと嫌がらせしてすいませんでしたって、生きてる価値が無い人間ですいませんでした、産まれて来てすいませんでした、お好きな慰謝料を請求してくださいって土下座しろや。」


ぇぇぇ…蓮夜先輩も彩音先輩もブチ切れてるのは分かるけど、それは…


「蓮夜…言い過ぎだって!まぁ、それくらいしても許されないけどさ。」


「あのっ!私は大丈夫ですから!別にどうでも…」


「「「どうでも…」」」


あれ?何か落ち込んでる?何で?


「あははははははっ!そうかっ!どうでも良いか!!!そりゃ良いわ!傑作だっ!」


「ふふっ。笑いすぎだよ、蓮夜。まぁ、面白かったけどっ。司ー!ご飯いこっ!お弁当作って来たから一緒に食べよー!」


「え?え?お弁当?私にですか…?」


「そうそう!もうお腹ペコペコだからいこー!」


混乱する私の手を引きながら彩音先輩の後を着いて行く。

それからの私の日常はすっかりと変わって…私は一目置かれる様になる。

蓮夜先輩と彩音先輩の二人が私を気にかけている、たったそれだけ…たったそれだけで私の日常は変化した。

私も、そんな先輩達と過ごす内に自分に自信を持つ事が出来て、明るくもなれて友達も増えて…私の日常の全ては一新したのだった。


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~とある週末~


「可愛いっ!司に良く似合ってて可愛いー!」


「あぁ、見違えたなぁ…彩音のセンスが良いのも勿論あるけど、司の元々の可愛さもあってとても似合ってる。」


週末に蓮夜先輩と彩音先輩に連れられて買い物に来てた。

彩音先輩が、蓮夜先輩の服のコーディネートをするのと同時に私の服装も沢山コーディネートしてくれて、色々な服の組み合わせを試してくれてる。


「あの…私には似合わないですよ…」


「何言ってんだ?凄い似合ってるぞ。マジで可愛い!折角だし買っちまおうぜ!」


「いやいやっ!お気持ちは嬉しいですけどそんなお金は…」


「良いから任せろ!すいませーん!このまま着て行くのでお会計お願いします!」


「せ、先輩?!」


「まぁまぁ、蓮夜に任せておけば良いって!今日の為におじさんとおばさんが蓮夜にお金渡してるし元々の予定だからここは甘えておくのが良いよ?」


「で、でも…安い買い物じゃ無いですし…」


「そうだけど、司の為に頑張ってるから素直に感謝しておこう?」


「は、はい…///良いんでしょうか…?」


「良いのっ!良いのっ!蓮夜も可愛い後輩が出来て嬉しいのもあるみたいだしね!」


うぅぅ…///可愛いって///私なんかでも可愛くなれるのかな…


「おし!会計は終わった!彩音、予約の時間は?」


「えっと…今から行けば丁度かな。」


「じゃー次はそっちにだな。終わったらご飯食べようぜ。彩音のご飯じゃ無いから不満だけど、偶には外食も良いと思うしな。」


「あの?次は何処に…?ってご飯も行くんですか?」


「そうそう!今日は遊び倒すよー!!!夕飯もいらないって連絡はしておいてね!司!」


ぇぇぇ…どんだけ遊ぶつもりなんですか…


「おし!そんじゃ行くぞー!次だ次!」


先を歩く二人の先輩の後を私は必死に着いて行く。

インドアな私にはきついです…先輩達の行動力…

荷物は蓮夜先輩が持ってくれてるから楽な部分もあるけど、それでも…


その後、私はお二人の行きつけの美容院に連れて行かれバッサリと髪を切って確りと整えて貰って今までの私とはさよならをして、鏡で自分を見たけど…誰これ?ってなった。

え…?私がこんなに可愛くなれるの…?


「うわぁ…凄い可愛いな。やっぱり司は美少女だわ。」


「うんうんっ!思った通りだった!くぅぅ!何か悔しい!それくらい可愛いっ!」


「うぅっ///ありがとうございますっ///」


彩音先輩のコーディネートとお二人の行きつけの美容院で整えた貰った私は自分でも、誰?となるくらいにすっかりと変わってしまった。


「これは司もモテまくるだろうな。マジで可愛い。」


「だねっ!まぁでも、気を付けないと気持ち悪いのが付きまとうからそこだけは注意ね。」


「その時は俺がぶっとばす。まっ、心配しても仕方ないし司はこれから間違いなくモテるって事で!」


「べ、別に…興味は無いですし…それにモテるなら好きな人にモテたいですっ///」


私はチラチラと無意識に蓮夜先輩を見る。

今、一番に仲が良くて私を助けてくれた男の子って言ったら蓮夜先輩だから、どうしても気になるのは仕方ないと思う。


「ふふっ。まぁ…仕方ないかな…?」


「どうした?彩音。」


「何でもないー!お腹空いちゃったしご飯いこっ!ご飯っ!」


「おいっ!待てっての!」


「待ってくださいー!」


蓮夜先輩と私は彩音先輩を追いかける。

自然と私は笑顔になって彩音先輩もニコニコしながら先を歩く…何でも無い有り触れた日常…幸せな日常…でもこの幸せが…壊れてしまうなんて今の私は考えもしなかった。


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