第2話 正体
俺の名前は
だがだとしてもあり得ない。確かに下の名前こそ一緒ではあるが、苗字は違うし髪もロング黒ではなくショートの銀髪だった。雰囲気がまるで違う。それに声だって……。
「フフッ、めっちゃ驚いてるね。目が見開いてるよ、よっぴー?」
「!?」
目の前の北川さんの口から漏れた今までとはまるで違う声を聞き俺は再び動きを止める。
あり得ないと思っていた。だが、こうなると認めざるを得ない。そしてそれと同時に絶望の淵へと落とされる。
北川さんは……俺の幼馴染である玲奈だ。
とはいえまだ現実を受け止めきれない俺はゆっくりと息を吐き、呼吸を整える。
そしてある程度落ち着いたところで俺は目の前でいつまでもニコニコしている北川さ___玲奈に話しかけることにする。
いや、ガチで違和感しかないな。
「……本当に玲奈なのか?」
「おっ、やっと認めてくれた感じ?」
玲奈は俺の言葉に対し更に口角を上げる。そして左耳に手で触れる。……完全に上機嫌な時の玲奈の癖だ。
「それは認める……にしてもだな、一体どういうことだ? 苗字は?」
「お母さんが再婚しただけ」
「髪は?」
「切るの面倒くさくて伸ばしただけ。それに銀髪だと目立ちすぎるから黒く染めた」
「……性格は?」
「演技、演技。家の中では以前と同じ。あんなの演じなきゃやってられないよ?」
俺の疑問に対しあまりにあまりに軽くアッサリと答えていく玲奈を見て俺はため息をつく。……苗字や髪はまぁいいとして、性格をあそこまで演技とはいえ変えるのは相当大変だろうに。
何故、そこまでして変えているのかは分からないが……突然よく分からないことをするのが玲奈だからある
「ねえ〜、なんか考えごとしてるフリして誤魔化そうとしてるみたいだけどさぁ。忘れてないよね? 自分がさっきなにを言ったのか」
「グッ」
流石玲奈といった所だろうか。アッサリと俺の思考を読み、言葉で先回りして逃げ道を断つ。なんて嫌な幼馴染ムーブを見せつけてくれるんだ。
「告白してくれたよね? 好きだって言ってたよね?……前は振ったのにね。今回は告白してくれるなんて嬉しいな〜♪」
そう、俺は昔玲奈からの告白を断っている。そもそもあの頃は俺は恋愛というものが分からず玲奈も友達としか思っていなかったわけだが。
それ以降は気まずくなり話せず玲奈はいつの間にか転校。最早、忘れかけていた頃にまさかこんな所で再会しようとは。
しかも、丁度俺が告白した相手が昔振った幼馴染とか色々と最悪すぎる。……これ、絶対にからかわれるやつだろ。
「っで、付き合うんだよね? 私ことが好きなよっぴー?」
「その言い方ヤメろっ」
さっきまでの幸せな気持ちはどこへやら、玲奈に完全に弄ばれる形となった俺はそう言い返すことしか出来ない。なんで俺は北川さん(玲奈)を演技しているとはいえ好きになってしまったのだろうか。
非常に悔やまれる。
「やっぱり、さっきの取り消しというわけにはいかないか?」
俺は無理だと分かっていながらも玲奈にそう言う。すると玲奈はしょうがないと言わんばかりにため息をつき、あるものを取り出した。
もしかして聞かなかったことにでもしてくれるのだろうか? その代わりになにか要求とか?
「よぉ〜く聞いてね。『…………その……最初は一目惚れでイイなって思っただけだったんだけど。みんなの為にいつも全力だったり、誰よりも頑張ってるはずなのに誰よりもみんなことを褒めてたり……そういうところを見てたら自然とその好き……になってたんだ。だから……もし、良かった付き合ってくれないかっ……ピッ』ちゃんと
……相変わらず、なんて意地悪な奴なんだ。
俺は目の前で今日1番の笑み(俺からすると悪魔の微笑み)をしている玲奈を見て、天を仰ぐのだった。
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次回「付き合う?」
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では!
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