第22話 To the dark kiss

夜 マルクの刻(元の世界でいう24時)

外に出て夜風に当たる

それでもまだ熱が冷めない

昼間の自分自身の力を理解できないまま

何となく星を見ているとおぼろげながら少し繋がっていくような気がした

「楽郎 眠れないの?」

「ステラさん」

ステラさんが外に出てくる

「おめでとう こんな短時間で古代魔術を身につけて

実戦で使えるなんて流石 私が見込んだ男ね」

「今まで実戦が多かったですからね」

「ふふふっ そうね」

・・・・ステラさんが俺の手をそっと握る

「ステラさん」

「ありがとう 助けてくれて」

ステラさんの唇が俺のそっと触れる

「―――あ」

俺がほうけていると

ステラさんが口に指を当てて

「ここから先は楽郎が成人してからね」

「はは 流石ですね」

「魔女は身持ちが固いの」

ガタンッ!!!!

俺とステラさんの後ろからハンマーを落とす音が鳴り響く

「アリスラさん」

「悪いね 別に盗み見してたわけじゃ」

「いいんですよ 私の番は終わったので」

「ったく 職人をからかうんじゃないよ

でも」

アリスラさんが俺に近づき

「試して見るのも一興さね」

アリスラさんが俺の襟を掴んで引き寄せながら口づけする

「―――い」

「じゃあ 私はもう一回」

ステラさんが俺の首を手で回して再び口づけする

「なっ!?」

「ちょっと あんたの番は終わったんじゃ」

「交代制だから」

「ふーん じゃあ今度はこっちの番だね」

「いいえ もう一回」

ステラさんがもう一度口づけする

「交代制じゃなかったのかい!」

「ほら 楽郎

こっちもするんだよ」

グイッとアリスラさんに頭を掴まれて口づけする

「いや もうそろそろ」

「だめよ こういうのはちゃんとしないと」

「もうしてますよね!? 4回も! んっ」

結局 ステラさんとアリスラさんの交互キスは20回ほど続き

実はステラさんとアリスラさんはキス魔なんじゃないのか

昼間の戦いとは別の意味で疲れた俺は安眠につくのだった


翌日

俺は相変わらず肉体の修練に励むことになり

ステラさんは昨日の戦いで俺が使えた謎の魔術について調査することとなった

昨日の戦いで俺は日の強い時にだけ体内の魔素をほぼ消費することなく魔術を使えることが分かったが

そんな古代魔術はどこにも資料がなく

4大古代魔術のいずれの系譜とも違うため

調査は難航するそうだ

アリスラさんは昨日の戦いで人を斬った刀のメンテナンスと

新しい魔具<ガイスト>の開発に勤しんでいる


午後 修練所・Muxa<ムクシャ>

よりによってもあの男と鉢合わせすることになる

「よぉ 楽郎だったか」

「ウェリドム ...さん」

「おいおい そんな嫌そうな顔するなよ

せっかく夜明けの明星のネタを仕入れてやろうと思ってんのによぉ」

「!!」

昨日 ステラさんとアリスラさんを襲撃した男の所属する組織か

「夜明けの明星が首都で暗躍している

近々 軍に掃討命令が下る」

「...それを俺に言ってどうするつもりなんですか」

「別にぃ~

惑星魔術のステラなんていう

最高の”囮”がいれば作戦が楽になるなぁ~と思ってなぁ」

「ステラさんは絶対にそんなところに行かせられません」

「そうかー 残念だなぁ

お前と同じ”異世界人”もあっちにいるらしいのになぁ」

「――――あんたは どこまで」

俺の体を光の魔素が覆う

「おいおい ここは体を鍛える場所だぜ

戦うとこじゃねぇ」

「分かってますよ」

「それじゃあな」

ウェリドムが去っていく

ニヤリと嫌な笑みを残して

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