第15話 To the memory

魔術の街 ルクルス 東門前

「よく帰ってきたな ステラ」

1人の老年の男が声をかけてきた

髪は白く

年相応のシワが顔に刻まれている

そして恐らく魔術師だな

魔素の流れを操っている感覚がある

隠しきれてない辺りステラさんと比べると数段劣るが

相応の魔術師だ

「ステラさんこの人は」

「叔父のライゼンよ」

「仲間が出来たのか

まだ若いようだが」

「残念 楽郎は私の婚約者よ」

「は?

ひ?

ふ?

へ!?

ほーーーーーー」

叔父さんが放心してしまった


ライゼン家 客室

「ゴホンっ!

えー ステラが選んだなら間違いなかろう

よろしく頼むよ 楽郎くん」

玄関から居間まですべて魔導書で埋め尽くされている

まるで書庫のような家だ

それに床や天井ありとあらゆるところに術式が記してあるせいで

まるで呪いの家だ

「叔父さんも相変わらずね」

「はじめまして 早乙女楽郎です

ステラさんと婚約しました」

「うん まぁいいんじゃないか

ほんと義姉さんに似たなぁ」

「お義姉さんってことは

ステラさんの」

「私の母ね」

「義姉さんはまだ当時学生だった弟とできちゃった婚してね

一家が混沌に包まれたんだよ」

「母さんの話はいいでしょ」

ステラさんが時々破天荒なのは母親譲りってことか

「でも弟なのに義姉さん?」

「それはね 年齢が2周り」

「叔父さん その話はいいでしょ

聞きたいことがあるの

光の古代魔術を樂郎に覚えさせる手はある?」

「あるにはあるが

楽郎くんは魔術には明るくないのだろう

厳しいものになるぞ」

「楽郎 どうする?」

「やります

俺は強く

ステラさんにふさわしい男になりたい」

そしてステラさんだけじゃなく

熟女しハーレムを作る

「ふむ

ならばあえて止める必要はないが

一度警告しておこう

危険だ と

古代魔術と現代魔術はそもそもの成り立ちが違う

古代魔術は術式を自分の体を用いる

最悪は術式の反作用で自分の体が破壊される可能性すらある」

「はい」

ここで引き下がる訳にはいかない

俺はステラさんに並び立てる男になりたい

「まぁ 今更なのよね」

「? どういうことだ?」

「楽郎は転生者よ」

「なるほど

既に死を乗り越えた者ということか

まさか実物に会えるとは

大体は3日と持たずにマフィアや半グレに攫われてしまうからね」

そうなのか 俺はステラさんに会えてほんとにラッキーだったんだな

「覚悟は出来ています」

「私も楽郎を信じるわ

何だかんだでうまく切り抜けられるはず

だめだったら私がやめさせるし」

「ステラも変わったな

楽郎くんのおかげだろうか」

「そう?」

「ちょっと太っ」

ステラさんが惑星魔術を発動する

「って冗談よ」

「ゴホンっ 

さて楽郎くん

修行に行くとするか」


魔術資料館 会議室

ライゼンさんが職員をしているいわゆる博物館兼図書館だ

古今東西を問わずあらゆる魔術の資料が収められている

とは言え惑星魔術のような失われた魔術術式については資料がかなり少ないらしい

ステラさんとアリスラさんは街で買い出しをするらしい

「さて 楽郎くんはこっちの世界の文字は最低限読めるのかね?」

「はい 何となくですが」

「なるほど そのレベルでは古代文字の解読は無理そうだね」

「古代文字?」

「そう 古代魔術の本には基本的に現代語に訳せない概念や技術が多数あってね

そういったものを理解していき

そして統合した時にようやく形になるのだが

古代文字が読める必要があるんだよ」

「そんな...

でもステラさんも」

「あの子は特別だ

生まれながらに土の古代魔術の概念を理解し

3日で7つの古代魔術を習得し

さらには30日で新たな古代魔術の体系を作り出した

発表はしていないから認められてはないがね」

「すごすぎて分からない」

「さて困ったな

君に今から古代文字を教えている時間はないのだろう

というかちんたらしてたらステラに何を言われるか」

最後のが本音っぽいな

「やっぱ俺が古代文字を解読しますよ

教えてくださ」

「だめです ライゼンさんは教えるの下手なんだから」

「?」

会議室の入り口に女性が立っていた

髪は茶髪のショートにメガネ

年は俺より少し上あたりだが知的な雰囲気を漂わせている

だが目つきが鋭い 性格きついタイプだな

「レイスさん」

「この方は?」

「私はレイス・ウィースリース・ガーディール

この魔術資料館の職員よ

ライゼンさんの上司にあたるわね」

「そ そうなんですか?」

「はは 彼女は優秀でね」

マジかよ ライゼンさんかなり年行ってるのにな

「俺は早乙女楽郎 極東から来ました

今はライゼンさんの姪の女性からの紹介で」

「ステラ 

ステラ・レッドスティアーナ・ベルフェガーダ・ドレスティア

若干4歳で古代魔術の1つ 惑星魔術を会得し

12歳で研究員に抜擢

その後20歳で離脱し放浪

許せない!

あれだけ才能がありながら何故!!!」

「し 知らないよ

落ち着いて 落ち着いて」

急にキレだしたレイスさんをライゼンさんがなだめる

怖いなこの人

頭はキレるが機嫌もすぐに切れるタイプか

ちょっと苦手なタイプかもしれん

「まぁいいわ 

あなた古代魔術を習得したいんでしょ

でもその前に古代概念<アーク・ビグリフ>を理解する必要がある と」

「はい でも俺は古代文字読めなくて」

「簡単よ 古代人の記憶を追体験すればいい」

「え!?」

「まさかあれを使うつもりなのか?」

「えぇ 覚悟はできてるんでしょ」

レイスさんの目がギラリと光る

「ステラさんの知り合いなら痛い目にあってもらわないと」

とレイスさんが小声でつぶやく

性格悪いな この人

「さぁ やるのやらないの?」

「やります」

脅されても引き下がれない理由が俺にもあるんでね


魔術資料館 地下5階

書庫が地下3階までで

地下4階と5階は打ち抜きでいくつかの装置が置かれている

「石座の中央の床に座ってこれを付けて」

ストーンヘンジのように何かの模様を作るように石がおいてある

その中心に座る

脳の内部が解剖図のように書かれた布を額に巻く

なんか塩っぱい匂いするな

塩水がなにかにひたしてあったのか

「お おい やめないか!

そんな出力にしたら頭に負担が大きすぎる!!!」

「だまりなさい! 行くわよ」

ストーンヘンジのような石の1つをずいっと外側に動かし

それと同時に魔素をいっきに注ぎ込む

これは魔術の術式だ

ステラさんに教えてもらった現代魔術と全く違うが

一体何が

バチッ!!!!

頭に電撃が走る

そこで俺の意識は途絶えた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る