第2話To the city Beginning

「ここが異世界か」

どこまでも広がる緩やかなカーブを描く草地、

香るは草の香り

ここから俺の冒険が始まるんだ

「熟女ハーレム作るぞおおおおお!!」


いや草の香りだけじゃないな何か据えた匂い

「むにゃん」

まさかこれは熟女に早くも遭遇か

後ろに振り返ると


「スライム、か」

ゲームだと可愛いが、こうして見ると気持ち悪いな

ナメクジを数倍大きくしたような体に、ねっとりした粘液をまとっている

「って服溶けてるっ!!?」

とっさに飛び下がるが、すでに粘液についてしまった服が溶けてしまった

溶かすなら熟女の服にしろよっ!!

「むにゃん」

動くたびにくにゃくにゃと体から気持ち悪い音が立てやがって

さっさと俺が倒して

「・・・・・」

「むにゃん」「むにゃん」「むにゃん」「むにゃん」

「・・・無理じゃね」

俺は武器も魔法もない丸腰の男

対して相手はさっきから地面から倍々に生えてくる

巨大な軟体動物になすすべはない

「むにゃっ!」「むにゃっ!」「むにゃっ!」「むにゃっ!」「むにゃっ!」「むにゃっ!」「むにゃっ!」「むにゃっ!」「むにゃっ!」「むにゃっ!」

「うおおおっ!!」

全力で逃走する

とりあえず遠くに見える街に向かって走る

「女神さあああん

せめて 武器か何か魔法みたいなの使わせてくれええええ!!!」


始まりの街・レイスフィア

三重の壁に守られた街

武器屋か仕事探し、いやここは敢えて熟女がいそうなところに行くか

女神は俺の熟女趣味を知っている

つまり性癖に相応しい場所に送ってくれたはずだ

・・・・

いない

いないぞ

若い男女はいるが、妙齢の女性が少ない

高齢者はほとんど見ない

コスプレみたいな杖ついた変な爺さんと婆さんはいたが

それ以外にはいない

高齢化率が低いとはいえ若すぎるだろ

女神さんよ 

俺のストライクゾーンを把握してないまま転生させたのかよっ!

それにここが異世界だと実感させるのはなによりも

”水道がない”

蛇口がないのだ

水は街を通る川から直で取ってるらしい

きれいな水が豊富な日本出身の俺にはこれはきつそうだな

電灯いや灯りは電気は別の動力で動いてるっぽいが

ガスは都市ガスでもなさそうだしまさか暖房がないとか言わないよな


「はぁ」

街を一通り歩いたら夕方になった

異世界ってのは誰とも出会いがないもんなんだな

どの人間も自分の生きる今日に必死で俺のことは目にも止めない

時々、俺の髪の色を珍しがる子供はいたが


怪しいピンク色の灯りが次々と灯る

「孤独  か」

異世界ってのは当たり前だが誰とも縁がないものだ

言葉は女神の手配で分かるが、話しかける勇気がない

みんな俺と見た目が違う

金色や銀色、それに薄いピンクなど多彩な髪の色、瞳の色も多彩だ

何より美男美女揃い

俺だけが黒い髪に焦げ茶色の瞳

それに美男というわけでもない

同じ人間なのは分かるが、話しかける勇気がでない

「ぼうや 遊んでかないかい?」

「あなたは」

妙齢の女性 

腰まで避けたスリットのスカートに大きく胸元まではだけた赤い服

「ミルクパブ・ホワイトミルクのレイラよ

どう 寄っていかない?

坊やでもホットミルクあるから大丈夫」

妙齢の女性、オアシスっ!!!

腰からお尻にかけての美しい曲線、それにほうれい線と

少し整えそこねて乱れたショートカットの髪がいい

「こ この街に来たばかりで金がなくて」

「残念 お金稼げたらまたおいで

じゃあまた」

「あ」

ここで別れたら 俺はまた1人になるのか

本当に服1枚でこの寒くなっていく夜を超えれるのか

「すいません!!!」

俺はレイラさんの手をつかむ

「きゃっ」

「す すいません!

1つ教えてほしいことが」

「てめぇえ!!!」

ドッ!!!

体が背後から吹き飛ばされる

「ガッ!」

肺の空気がすべて絞り出されるような感覚の後に

地面に叩きつけられる

「ってぇ」

「うちの看板娘に何してくれてんだっ!!!」

身長2mはありそうな巨漢

筋肉の鎧をまとった強面の男

こいつはぱっと見で分かる 強い

「レイラ こいつは誰だ」

男は拳を構える

「ちょっとやりすぎよ! この子はこの街に来たばっかりで

何か聞こうとしただけ」

「問答無用!!」

巨漢の男が拳を振り下ろす

「やめなっ!!!」

男の拳がピタリと泊まる

「マスター」

男の拳が小刻みに震え始める

「こ こいつは違うんでさぁ

オラ ただレイラのボディガードだから」

「お黙り 裏口で待機してな

レイラはさっさと仕出しやれ」

マスターと呼ばれた女が視線を向けると

男とレイラさんは震えながら店の裏口へと歩いて行く

「店の者が失礼したね

あたしはこの店のマスターのリーンヴェルト

金が作れたら来なよ 歓迎する

それと詫びの印だ これで今回のことは黙ってくれるかい」

リーンヴェルトが手渡したのは銀貨3枚

「こんなの受け取れない」

「いいんだよ!!」

リーンヴェルトさんが俺の手に無理やり銀貨を握らせる

「すいません」

「謝りすぎよ 男ならもっとドンと構えてな

それとあんた聴きたいことがあったんだろ」

「はい 冒険の仲間を探してまして

どなたか手練れで俺と組んでくれそうな人がいれば教えてほしいです

出来れば妙齢の女性がいいです」

「冒険? 今のご時世に面白いこと考えるもんだねぇ

それに妙齢の女性ねぇ

あんたいい趣味してるねぇ」

「熟女はこの世の宝です!!!」

「・・・・・」

俺は初対面の人に何を言ってるんだ

だが譲れん この主張だけは絶対に譲れんのだ

「1人いるよ

めちゃくちゃ気難しいけどあんたなら大丈夫かもね」

「お名前と住所をお教えいただけますか!!」

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