魔女の子供
男達は少女を連れて町からどんどん離れていった。どこに行くんだろう?大体半日ぐらい経ったのかな?あの男達が町から出たのがちょうど正午くらいだったから辺りはすっかり真っ暗になっていた。男達は途中で火を起こして明かりを確保してた。
しばらく進んでいると男達が森の手前で立ち止まった。
なにやら話し合っているようだ······
盗聴だぁ!
一人の男がリーダーらしき男に向かって喋りかけた
「おい、そろそろ良いんじゃないか?国からもだいぶ離れたしこれ以上行ったら俺らが帰るのが遅くなっちまう」
するとリーダーらしき男が
「ふむ、そうだな······おい!忌み子!お前とはここでさよならだ。ったくお前のせいで俺らは1日無駄にしたんだからな!恨むんだったら自分の母親を恨みな!お前があの魔女みたいに殺されなかったのも司祭様のおかげだから感謝しろよ!二度と俺らの目の前に姿を見せるんじゃねえ!」
リーダーらしき男はそういうと少女の腹を蹴りあげ蹲った少女に唾を吐きかけた。そして周りの男達もそれぞれ少女を蹴って唾を吐きかけた
すると少女は息絶え絶えになりながらも男達に話しかけた
「ッグゥ···ねぇ私が·ッ··何をしたの?お母さんもッ······ハァ······あなた達に何か···ッ悪いことをしたの?ねぇ」
「あ"ぁ?そりゃあもちろんお前が魔女の子供だからだよ。お前達親子が2、3年前に急に俺らの国に来て、住ませてくれって言ってきたから住まわせてやってたのによぉ······まさか魔女だったなんてなぁ?司祭様は魔女は悪いやつだって聞いたぞ?魔女なんて悪いやつは生きてたらダメなんだ。だから殺されたんだ····わかるか?」
「ッ····お母さんは···グッ···何も··悪いことなんて······してない!」
「チッ······さっきから質問に答えてやってるのにうるせぇな!オラッ!」
リーダーらしき男はそう言うとまた少女を蹴ろうとした。
そろそろ行こうか·······とりあえず明らかにあの男達が悪いってわかったね。とりあえずあの子を守るか。私はあの男と少女の間に結界を張った。
ガン!
「あ"ぁ?なんだこれ?見えない何かが······テメェがやったのか?おい!忌み子!お前も魔女だったのか!」
「?ち、違う··グッ····私じゃ、ない」
私は雲を生み出して月明かりを隠し魔法で松明の火を消した。色々と混乱している男達と少女の近くに気配を消して近づいた。
~side少女~
私のお母さんは不思議な力が使えた。寒かったら火を出したり、喉が渇いたら水を出したり危険な動物もお母さんが追い払ってくれた。お母さんは私が物心ついたときにはすでに一緒に旅をしていた。
なんで旅をしているのか聞いたら昔は村に住んでいたけどお母さんが使う力を怖がって村から追い出されたそうだ。私のお父さんはお母さんを逃がすために村の人たちを足止めしてたらしい。今も生きてるのか死んでしまったのかはわかってないらしい。
お母さんはその話をする時、とても悲しそうな顔をしていた。
そんな旅をしていたある時、私たちは大きな国を見つけた。
そしてお母さんがその国の人達と話をして、そこに住まわせてくれるという話になった。お母さんと私はその国に住ませてもらうことにした。
そしてその国に住んで3年ぐらいたった時、隣の家が崩れて中に人が閉じ込められてしまった。
お母さんはその人を助けるためにあの不思議な力を使った······使ってしまった。
その閉じ込められた人を助けたとき、周りの人達はお母さんを何か恐ろしいものを見るような目で見ていた。
そして周りの誰かが「ま、魔女だ!魔女がいるぞ!捕まえろ!」と叫びお母さんは···捕まってしまった。
力を使えば簡単に逃げれたのにお母さんは力を使わなかった。私は昔お母さんになんでその力があるのに村の人達から逃げたのか聞いたことがある。
するとお母さんは「お母さんはね人を傷つけたくないの。もし人を傷つけちゃったら絶対に村の人達はお母さんが危険だって思うでしょ?もし村の人達がお母さんを危険だと思ったら、貴女も危険な目に遭うかもしれないからよ」と言っていた。
だからお母さんは周りの人達に捕まって、押さえつけられてもなにもしなかったんだと思う。
そして、お母さんが閉じ込められて3日が経った時、私はお母さんが殺されたことを知った。私はお母さんが死んだことを知らせに来た大人に、無理矢理広場に連れられていった。
そこにあったのは青白くなり髪は乱れ、ボロボロになり動かなくなったお母さんの姿だった。その時私が何を喋ったのか叫んだのか記憶にない。
記憶にあるのは周りの大人達に殴られて気づいた時にはボロボロの小屋にいたということだ。
それから何日経ったのかはわからない。ある日突然外に連れ出され今までよりもボロボロの服に着替えさせられ広場に連れてこられた。
大人達に「お前をこの国から遠いところに連れていく殺されないだけマシと思え、本来だったらお前も殺されてるはずなんだけどな。司祭様に感謝しろ!」と言われ私は国の外に連れ出された。
そして、すっかり辺りが暗くなり大きな月が煌々と輝く夜になり男達は目の前の森の前で立ち止まった立ち止まった。私は休みなく歩いてきたせいで足元が少しふらつく。大人達はどうやらここで私を置いていくようだ。
私は男達にここでさよならだと言われるとたくさん蹴られて唾を吐かれた。男達はお母さんが殺されたのは魔女だからと言われた。魔女は悪いやつだから殺さないといけないと。
違う
お母さんは悪い人なんかじゃないお母さんは優しくていつも私のことを守ってくれて······それにあの崩れた家から人を助けたのはお母さんだ···なのに············なんで························
私が喋るとリーダーの男が怒ってもう一度私を蹴ろうとした。私は目をつぶってこれから来る痛みに堪えようとした··················だけど私は蹴られなかった······いや違う目の前にいる大人は実際に私をめがけて蹴った······だけど私と男の間に見えない何かがあった。
?
なに、これ······?
男が私に向かってお前も魔女だったのかと言ったけど私はこんなの知らない。確かに私も少しはあの不思議なちからを使えるけど、使えたとしても火は一瞬しか出せないし一番得意な水は家くらい大きいのを出せるけど一回でとても疲れてしまう。だから私がこんなのできるはずがない。
私達が混乱していると男達が持っていた松明が急に消えて、あれほど煌々輝いていた月が雲に隠れているのに気がついた。
そして、ふと私は近くに何かの気配を感じた。男達も何かに気がついたみたいで静かになった。しばらく黙っていると急に寒くなってきた倒れている地面を見れば、だんだんと霜が降りていた。
あり得ない······まだ冬には程遠いのに············こんなに急に冷えるなんて。
そして私達の耳にある音が聞こえてきた。それはまるで生き物が呼吸しているかのようなそんな音だった。だけど、どこから聞こえてくるのかが全くわからなかった。
そんな音に耳を澄ませていると、月を隠していた雲がだんだんと移動してまた月が見え始めた。その月明かりのお陰でまた周りがだんだんと見えるようになってきた。呼吸の音は聞こえるのに、それがどこにいるか全くわからないという不思議なことに困惑していると、男達が驚愕した顔で私の倒れている後ろの上の方を見ているのがわかった。私は残った力を振り絞って起き上がり後ろを見た。
そこには············
白銀に輝きこの世の者とは思えないほど美しい四足の獣がいた。私はそれを見たと同時に凄まじい恐怖に襲われた。
狼だ······お母さんと旅をしているときに教えて貰って何度か見た獣。しかしその狼とは比べ物にならないほどその白銀の狼は大きかった。
私がそんなことを考えていると男達が騒ぎだした
「ヒィッ············な··な、なんなんだよあいつは!」
「知らねえよ!わかるかそんなこと!」
「こ、殺されるッ!」
「に、ににに逃げよう!あんなのに襲われたら俺ら死んじまう!」
男達は逃げようとするが恐怖でその場から動くことができないらしく足がガクガクと震えていた。私も体がさっきから震えている。怖いっ!
私達が恐怖で固まっていると狼が一歩こちらに踏み出した。するとその狼の足下から花が咲いてきて一瞬で凍った、そして直感でわかった······この狼だあの見えない何かを出したのは······!
狼は一歩ずつゆっくりと私達に近づいてきた。
そして次の瞬間頭の中に声が響いてきた。
『はぁ······全く大の大人が小さい子供をよってたかって虐めるなんて野蛮だな。この場から失せろ!』
その声があの狼から発せられたというのが感覚的にわかった。
「ヒ、ヒィ!わ、わかった!おい!お前ら、に······逃げるぞ!」
『あぁ······それとこの子は私が貰うよ、文句は無いね?』
私はその言葉を聞いたとき頭が真っ白になった。私······この狼に貰われるの?
「あぁ!わ、わかった!そんなやつ好きなようにして良い!だ、だから!殺さないでくれ!」
『殺すわけないじゃないか、野蛮だなぁさっきから言ってるだろ、もう良いからさっさとこの場から消えてくれ』
その狼がそう言うと急に男達を吹雪が襲った
男達は急いできた道を逃げ帰っていった。
その場に残ったのは大きな狼と私だけだった······私は一体どうなってしまうんだろうか。
『······行ったか。さて、君名前はある?』
大きな狼が私に質問をしてきた。
「わ、私の名前?」
『うんそう、いちいち君とか呼ぶのもなんか変だしね、名前があるなら教えてよ』
「わ·····私は、え······エンリ······」
『そう······エンリか、良い名前だ。エンリちゃん君には2つの選択肢がある。一つここで私とは離れて1人で生きていく。でもこれだとエンリちゃんは危険な動物に襲われて死ぬかもしれない。』
「い、嫌だ······まだ······まだ死にたくない!」
『うん、そうだよね。ここで二つ目だそれは私と一緒に来て生きる
「あ、あの······なんでそんなことをしてくれるんですか?そ、それに············わ、私をたた食べたりしないんですか?」
私はこの狼がなんで私なんかを気にするのかわからなかった。
『食べる?なんで?嫌だよそんなの。なんでわざわざ人間なんて食べなきゃいけないの?』
「だってあなたは狼だし············」
『へぇ狼を知ってるんだ······私は確かに狼だけど人間は食べないよ。私が食べるのは野生の動物か野菜だもん。それとなんでエンリちゃんを気にするのかって?······それはエンリちゃんが可哀想だったからだよ。』
「か、可哀想?」
『そう、可哀想。あの男達とエンリちゃんの会話を聞いてたけど悪いのは明らかにあの男達の方だったからね』
「でも、それはあなたには別に関係ない話だっでしょ?なんでわざわざ······」
『うーん、さすがにあの状況で見捨てていくのもなんか嫌だったし·····せっかく救えるんだったら救いたかったからね』
「······あなたは、優しいんですね······」
『優しいのかな?まぁエンリちゃんはどうするの?さっき言ったようにエンリちゃんが選べる道は2つ、このまま私とさよならして一人で生きていくか、私と一緒に来て生き方を学ぶか選ぶのはエンリちゃんだよ』
「わ、私は············生き方を····学びたいですッ!もう寂しい思いはしたくない!このまま一人でいたら私は死んじゃう!そしたらお母さんとの約束を破っちゃうことになる······!」
『約束?』
「はい、お母さんと約束したんですお母さんが私よりも先に死んでも貴女はお母さんよりもさらに長生きしなさいって!だから!私はあなたと一緒に行きます!私に生きる術を教えてください!」
『······そっか、じゃあ決まりだね。エンリちゃんが決めたなら私はエンリちゃんに私の知る全ての生きる術を教える。これからよろしくねエンリちゃん。』
「はい!よろしくお願いします!えっと······」
『あぁ名前を教えてなかったね。私は
「ベル····様······これからよろしくお願いします!」
こうして私は神の狼、ベル様に救われたのだった私はこの瞬間と恩を一生忘れないだろう。
ベル様ありがとう!
~sideベル~
うっひゃ~久々に人と会話したから緊張した~!!いや~噛まなくてよかったぁ!あそこで噛んでたらめっちゃ恥ずかしかったしね!
さてと、これからエンリちゃん大改造計画が始まるから忙しくなるぞ!
あ、神域
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