それは、ふと見上げた空に虹を見た時のような。

 ふっ、と意識が浮上する。あまりにも気持ちの良い目覚めだった。スマートフォンを確認すると、普段起きるよりもずっと早い時間が液晶に表示されている。ほう、と思わず息を吐いた。私がこうして起きるのは珍しいことだから。


 そろり、ゆっくりとベットからカーペットへ足を下す。慌ただしくベッドから跳ね起きるのではない朝は思い出せる限り初めてで、なんだか新鮮な感覚。


 カーテンを開ける。シャッ、と小気味良い音が鳴って、室内に太陽の光が降り注いだ。思わず目を細める。普段なら憎らしいばかりの太陽光も、今日はどうしてかするりと受け入れることができた。


 「おはよう」と誰に言うでもなく口にしてみる。当然、一人暮らしの部屋の中からは、返事は返ってこない。それでも、なぜか気分は良いままで。

 こんな日なら、きっといつもはおざなりに済ませてしまう朝食ものんびり食べることができる。服もゆっくり選べるし、メイクだっていつもより丁寧にできるはず。それか、いつもより早めに家を出て、通勤ラッシュを避けて電車に乗ってみてもいいかもしれない。


 大好きな夜更かしの時間を捨てることはできないけれど、こんな朝だって間違いなく素敵だ。


――――――――

以下の企画に参加させていただいた作品です。

https://mobile.twitter.com/kro_ba_/status/1621365587053273088

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る