第8話
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ロダンは静寂の宵闇に包まれながらじょりじょりともじゃもじゃ頭を掻くと、それから首をぴしゃりと叩いた。
それから酷くすまなさそうに、しかし真実をごまかさないぞという強い響きで話し出し始める。
「…小野寺さん、すいませんねぇ。僕はストーカーをしていたわけじゃないんです。あなたの行動と森奥に捨てられた色とりどりの下着類――を見て、それらが僕をこう…奇妙なパズルを解かないと何とも言えない衝動に駆りたて、それ故にあなたが茜丸を飛ばすのを繁みに隠れて見ていたんです。
そうですねぇ、あなた、茜丸を空へ飛ばす時いいますね――「今日も良いよ、日和」と。僕はねぇ、それを聞いた時、鷹を飛ばす空の事だと思ったんですが、でもあの学生寮の付近を通って様子を伺っていると数人の女子大生がある女性に向かって言うんですよ…「ひより、今日どこに遊びに行く?」なんて。その時、僕、不意にその人に声かけたんです。――あなたはひよりさん?と、まぁ思いっきり睨まれましたけどね。しかしながら今全てを思えば、あなたは良い日よりじゃなく。つまり「今日も好いよ、ひより」と言ってたんですよね。それはあなたがFtM(FemaletoMale)だと言われて良く分かったんです。
つまりですよ、あなたはあの田中ひよりを好いている。あなたと彼女の関係はあなたが黙すなら僕等は彼女に聞くだけです。…ええ、あなたはさも同然の様に筋書きをお膳だてしました。それは最もらしく聞こえますが、しかしながら全てはあなたの中に共存、いやあなたが自己認識している『性』が求めた、極めて単純なこれは猥褻事件だった訳です。あなたは田中ひよりも好いたでしょう、しかし他の女子の事はどうでしたか?ええ、そうですね、眼差しを伏せましたね。そこにあなたの答えがあるようです。
小野寺麻衣子さん、僕はねぇ、あなたを隠れて追い回していた時から、あなたのその何というか美しさに雷の様に撃たれてしまった。それはあなたの内面に潜む『美』と『性』に対する反発がそうさせたのですね。
では僕からの提案です。
今からでもいいじゃないですか、もうこんなことは止めて罪を改め、彼女に直接告白されたら。そうすればこうした精神的な分裂ともいうような苦しもなく、恋が成就したらあなたらしい素晴らしい人生を歩める一歩になるでしょうから」
ロダンはそこで大きく息を吐くと巡査を促して森の小道を振り返ることなく下って行く。
促された巡査もまた下ってゆくのだが、その時背後で小野寺麻衣子のすすり泣く声が聞こえた。
巡査は思った。
それが果たして男なのか?女なのか?いやそんな『性』は全てが分かった今はどうでもよく、それは闇に紛れて聞こえる恋する者が恋に破れたすすり泣く声なのだと理解すればそれで十分だった。
何故、十分だったのか?
それは…
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