第3話

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 戸田巡査は田中ひよりが言った事を思い出しながら学生寮の門から自転車を押しながら少し離れた通りに出た。川沿いの通りは人が見当たらない。

(マッチ棒…ねぇ)

 そんな人物、特に警ら中には見ていない。それ程の特徴ある人物ならば見かければ忘れない。それが記憶にないという事は生活時間が異なり自分とすれ違いが多いのか、そうでなければ最近この付近に来たという事だろうか。いやもしかすると行動は夜行性で普段から日中は出てこない社会性をもった人物かもしれない。

 あらゆる可能性があるが、確かなのはその人物は自転車を押しながら昼間この付近を歩いているという事だ。

 不審人物である。

 それが…


 ――自転車を押していた。

 そして数度となくこの付近で見られた。


 それが意味することは何か?

 

 巡査がそう思いながらペダルに足を踏み込んだ時である。思わず、もう少しで危うく踏み込んだペダルから自分がずり落ちそうになったのだ。

 何故なら突如曲がり角から目前にその不審人物が自転車を押しながら現れたからである。

 それも僅かに首を上げて空を見上げながら。

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