マッチ売り
けいりん
マッチ売り
「ねえ、おじさん。マッチ買ってよ」
「はあ?」
「安くしとくよ」
「いらない。タバコ吸わないし。大体なんでマッチなの」
「そこよ。あたし見て、わかんない?」
「えっと、パンクファッション……ドラッグ?」
「なんでよ! じゃ、これならわかる?『マッチを買ってください!』」
「……マッチ売りの少女?」
「そう、それ! これね、あのお話に出てくるマッチ、そのものなのよ」
「まさか」
「じゃ、試してみなよ。納得いったら、箱ごと買ってくれればいいからさ」
「えー?」
「いいからいいから。ほら。つけてみなよ」
「しょうがないなあ……よっと」
「うまいじゃん」
「これくらいはね……あれ?」
「なんか見える?」
「あの犬……マル? それに、この家……一昨年壊したはずなのに」
「思い出の家、かあ。それがあなたの望むものなのね」
「そんな、いや、とっくに諦めて……でも……この部屋の中には、まさか……ああっ! 母さん!」
「……もしもし? おーい。死んだ? 死んだね? えっと魂……あ、いたいた。よっ、と。……全くいいもんができたよね。心の奥底で一番欲しいものを見せてやれば、人の魂なんて簡単に収穫できるんだから。時よ止まれ、お前は美しい、なんつーてね」
マッチ売り けいりん @k-ring
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