第173話 遭遇?(失礼)
午前10時
二期生の初配信を見届けた俺は、高太郎さんと話をする為に、社長室へと向かっていた。
「取り敢えず、昨日の配信で批判コメントが沸いていたから、その対応と・・・、それぞれのメンタルケアを視野に入れておかないと、後々問題になるかもしれないってことぐらいか。あっ、二期生の内、誰が会社住みになるか聞いておけば良かったな。先に挨拶とかも済ませた方が良かっただろうし。」
廊下を歩きながら、ブツブツ独り言をこぼしていると、聞き覚えぼある声が聞こえて来た。
気になって声の聞こえる方へ向かって見ると、食堂の席で一人リアクションをしながら、食事をしている人物が居た。
よく見ると、服装はジャージだった為、ぱっと見では分からなかったが、二期生の魔王、シリウス・ルガ・ラルトゥーナさん、そのままの姿で存在していた。
「フハハッ!この食堂の『カツ丼』とやらは美味いな!!ムムッ、この味噌汁も中々ッ!!アツツッ⁉なんと、この我に熱を感じさせるとは・・・地獄の水か?」
なんだろうな、声の出し方と活舌が良いのか、声がよく通っている。声優とかに向いてそうな声質だ。
ただ、本人はそれほど大きな声を出している自覚が無いせいか、食堂の外の廊下にまで声が響いてしまっているにも関わらず、本人は気付いていないな様子だな。
一応、食堂の社員が話しかけようとはしているのだが、まぁ、どう話しかけたら良いのか分からないよな。巻き込まれたら困るし。
「ふぅぅぅ、あー、この手の問題は俺に向いて無いのになぁ。・・・よしっ。」
食堂の手前の廊下で気分を落ち着けた後、心臓の鼓動が早まるのを感じながら食堂に入る。恰も、シリウスさんに気付いていないかのように。
「あっ⁉もしかして、シリウス・ルガ・ラルトゥーナさんですか?」
「ん?・・・お主、よく気付いたな!その通り、我はシリウス・ルガラルトゥーナだ!我の仮初の姿に気付いた褒美に、お主が名乗ることを許そうぞ!」
「あっ、ありがとうございます!初めまして。俺は、一期生の鬼道 奈落と言います。昨日の、シリウス・ルガ・ラルトゥーナさんの初配信は、お見事でした!特に、画面のスライドが見やすく構成されていて、凝りに凝ってましたよね。」
どうだ?俺のスルースキルは?
・・・・キツイ。てっきり、話しかけたら元に?正常な感じに戻るのかと思ったら、そのままのキャラで話して来たから、思わずノリに乗ってしまった。
と言うか、仮初の姿だったのか?
「なんと、一期生の者だったのか!この会社では、ライバーの中で一期生が一番偉いのであろう?それなら、我も秩序を守るものとして従わなければなるまい!!奈落先輩、今度ともよろしく頼むぞ?」
「こちらこそよろしくお願いします。そう言えば、先程までシリウス・ルガ・ラルトゥーナさんっぽい声が、廊下の端まで響いていたんですけど、大丈夫でしたか?」
「⁉・・・すっ・・・誠か?それなら、もう少し声量を落とすことにするぞ!迷惑を掛けたなら、悪かったな!それと今後、我のことはシリウスと呼んでくれ!」
「いえいえ、気付かなかったならしょうがないですよ。シリウスさんですね?了解です。」
「うむっ!・・・・・・・・・よっしゃ。」
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