第172話 ミマモリ

午後7時

 高太郎さんとの仕込みを終えてから四日が経ち、いよいよ二期生の初配信を迎える時となった。


 『久しぶりだなゴミ共!!!いや、初めての奴も居るだろうから名乗りを上げておやろう!我の名は、シリウス・ルガ・ラルトゥーナと言う、下賤の身であろうお前ら教えるには、些かもったいない名前だが、よく覚えておけ!』


 二期生トップバッターからキャラが濃すぎるな。

 顔だけ見れば黒髪黒目で、やや幼い印象を受ける普通の顔立ちな男性なのだが、そのせいか余計に目立っている、頭に付いている二本の角と、『何処の魔王だ!』と言いたくなるくらい、禍々しいロングコートとジャケットを着ている。しかも、胸や肩には、人によっては下品と捉えられるだろう、数多くの宝石が装飾されていた。

 ちなみに、高太郎さんから聞いた事前の情報だと、この人は俺達『炎上組』と同じように、個人勢として活動していたところをスカウトしたようで、普段生活している時も、基本はこの口調らしい。最初、良いのか?視聴者に『ゴミ』だの『下船』だとか言って?と思ったのだが、活動初期に一回炎上してからは、生暖かい目で見られているようだ。

 おまけ情報:元異世界の勇者らしい。エクスカリバーとかあるのかな?


午後8時


 『えーと、これで良いんでしょうか?あっ、もう配信出来てるんですね!えーと、皆さん初めまして!この度、スペースオペラ二期生としてデビューすることになりました、母美津 歌恋と申しますぅ!!』


 二人目は、綺麗な緑色の髪をバンダナで纏め、服は白のエプロンで隠されている為、よく見ることが出来ないが、それらの特徴を上回るほど強調されている、豊満な胸の部分に、コメント欄は反応を示しているようだ。

 たれ目が原因なのか、どことなく包容力の高そうな印象を感じ取れる為、見た感じ、男性からの人気が高そうだな。

 おまけ情報:視聴者と愛称を決める際、コメント欄のほとんどが『ママ』で埋まった。残りの一部は『給食のおばさん』


午後9時


 『フフッ、皆さんこんばんは!私の名前は、エストランネよぉ!どうぞ、皆さんよろしくねぇん!!ちなみに、現在、彼氏募集中よ?」


 三人目は、ピンクの髪に水色のメッシュを入れた髪の毛と、真っ赤に輝く瞳が特徴な、筋骨隆々とした男性?女性?まぁ、そんな感じの人物だった。

 しかも、頭には黒色の猫耳が付けられており、メイド服を着ている。どうやら、メイド喫茶でアルバイトをしている設定のようだ。

 頭の猫耳を見ようとすると、目元の濃い眉毛にも視線が向いてしまう為、何とも言えない気持ちになる。コメント欄にも、俺と同じ感情を得ている人も居るようで、気のせいでは無いのだろう。

 おまけ情報:手入れを欠かせていない、綺麗な足が自慢。



 「ふぅぅ、これで全員かな?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る