第143話 腹一匁2


 「そうだ!ダイエットを始める前に、この前の企画やってしまった方が良いんじゃないですか?」


 「この前の企画ですか?・・・ああ!なるほど!確か、城東さんがバイトをしていた串カツ屋、えーと『バッチ濃』さんとの大食い企画ですよね!」


 この前、城東さんを含めた三人で集まった時に、『何か面白いコラボ企画を考えてみるか!』と、何となく話し合った時に出たのが、大食い企画だった。多分、腹一さんの食事スピードを見て、この企画が出たのだろう。

 配信コンテンツとして見ると、視聴者人気が高い『飯テロ』としてウケが良いだろうし、城東さん的には、『バッチ濃』の宣伝にも繋がってくれればさらに良しって感じのようだ。


 「それですそれです。多分、本格的なダイエットを始めてしまうと、揚げ物は食べれませんから、先に嫌になるだけ食べてしまいましょう。」


 「・・そうしますか!それで、企画参加者はどうなってましたっけ?」


 「残念ながら、最初のメンバーから増えてませんよ?俺と腹一さんと城東さんだけです。」


 「ははっ!まぁ、しょうがないですよね!中々、女性の方々に『大食いしませんか?』なんて説明して、OKを出して貰う方が難しいでしょうし、どうせなら居酒屋っぽく、お酒も何杯か飲んだ方が良いのかもしれません!幸いなことに、私達の配信を観て下さっている方達の平均年齢は、成人を迎えている方達ばかりですし!」


 お酒か。その路線もアリかもしれない。『オトコ飲み!』とか『居酒屋スペースオペラ!」みたいなタイトルにして、配信の受けが良ければシリーズ化も考えることが出来るだろう。一つの重要な問題さえ解決出来ればの話だが。


 「ただ、スタッフさんからの指摘なんですけど、食事シーンや料理の写真等はどうするのか?と言われまして、我々Vtuberが食事系や料理系の配信をする場合、極力肌を見せないように、手袋や写真のみを映し出して配信するのが基本なんですけど、どうしましょうか?高太郎さんに聞いたところ、『各々の匙加減で!』って指示ですけど。」


 「・・完全に忘れてましたね。これに関しては、城東さんにも相談しな「どうせなら、料理がしっかり見えるように、胸辺りまで映した方が良いんじゃないか?」っ、城東さん⁉」


 いつの間にか、城東さんが俺の隣の席に座っていた。テーブルの上には、俺達と同じとんかつ定食が置いてあり、もう半分近く無くなっている。二人共、食べるの早くないか?と言うか、全然気がつかなかった!!


 「城東さん、隣に座ってたなら、もう少し早く会話に混ざってくださいよ!いやー、ビックリしました!」


 「はははっ!!違う違う!!俺はさっきまで、離れたところで食ってたんだって!席には今、座ったばかりだしよ!それで二人は、半分実写みたいな感じで配信に映るのは、大丈夫なんか?俺はまぁ、もう配信に乗せてるから大丈夫だが。」


 「俺も全然大丈夫ですよ?実写に関しては、手遅れな部分もありますし。」


 「私も大丈夫です!まぁ、中年が食事をしているのを見て、面白いと思って貰えるのなら幸いですけど。」


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