第135話 後悔(城東視点)

午後8時


 会社のロビーで奈落と別れた後俺は、自分の部屋に戻り、リビングのソファーに座りながら天井を眺めていた。

 軽く酔いが収まるのを感じ取りながらも思い出すのは、沙也加が事故に遭った当時の事。

 父さんが死ぬ前に残した言葉、『沙也加を守れ』。それだけを信念に生活していたのにも関わらず、結果は事故に巻き込ませてしまった。しかも元々は、俺を狙ったものだったのに・・・・俺を庇ったせいで・・・。


 「あぁ、また嫌なことを思い出してしまったな・・・。奈落と話したせいか?しょうがない、こんな時は・・・」


 ソファーから立ち上がり冷蔵庫まで向かうと、中から缶ビールを二本取り出し、寝室のベッドに腰を掛ける。必殺【酒任せ】ってか?


 「はぁぁ、そろそろアルコールも控えないとヤバそうだな!」


 缶ビール一本の半分近くを飲み、まだ空けていない方の缶ビールは、ベッド横の机に置く。机の上には、一昨日から溜まり続けている缶ビールの空き缶が8本。流石に飲み過ぎか?

 そんな、直す気も無い生活習慣を考えながら、今日の会話を思い出す。


 「あの感じだと、俺の過去に何があったかなんて、ある程度は調べてる感じだったな・・。それに、沙也加が事故に遭った状況とか、人を刺した俺がどうやって普通の生活を手に入れたのか等、その辺りの事は何となく理解してそうだよなぁ。流石に、俺が何故Vtuberとして活動してるのかは分かっていないようだがな!」


 実際、沙也加の生活を安定させるだけなら、派遣やアルバイトの仕事をした方が安定しやすいだろう。ただ、俺はVtuberで成り上がると決めたのだ、一度決めたことは変えられねぇ!

 沙也加が好きなVtuberを、絶対超えてみせる!!そうすれば・・・・ちょっとくらい、喜んで貰えるだろう。


 「ふふっ。おっと、まだ背中も見えてない状況で、夢に浸るのは馬鹿のすることだな・・。・・・それにしても、奈落の奴、俺が人を刺したって話をした時、一瞬?同族嫌悪とかは聞いたことはあるが、仲間意識でも芽生えたか?」


 鬼道 奈落、又は鬼堕 俊隆と調べた時、一番上に表示されるのが『犯罪者』や『殺人』などのタグだ。これに関しては、俺も色々と肩身の狭い生活を送った事があるから、共感しか沸かない。

 だからこそ、説明中に『人殺し』の内容が出た時は、嫌悪感を抱くであろうとは思ったが、笑うとはなぁ。まぁ、多分だが、奈落は無意識で笑ってたんだと思うけどな。


 「はっ、よく考えたら、居酒屋で人を殺したのなんだの、話してる俺も大概だったな!」


 本当、他の奴に聞かれて無くて良かったぜ!


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