第92話 消去消去

午後2時

 雅紀の奴が捕まってから、さらに周りが慌ただしくなった。

 まず、刑事事件が取り消しとなり、留置所から出ることが出来た。ただ、俺の取り調べを担当していた検察官が前日になって謝りに来た時は、下心が丸見え過ぎて不快感を感じてしまった。その隣に居た男の警察官は気まずそうな顔をしていたが、自業自得だろう。

 残すは、民事事件だけになったのだが、裁判を取り消すつもりは無いらしい。そこまでして、賠償金を貰いたいのか?それか、保険金が下りるのを阻止する為か?どっちにしろ、真壁家と近藤家が結託して何かを企んでいた事は知っているし、誰も流也の死を本気で気にしてる奴はいない。俺が言うのもなんだが、浮かばれない人だな。

 今も伸二さんの家にお邪魔しているのだが、留置所に入る前と同様、伸二さんの家の周りには報道陣が多数集まっていて、再び近隣住民からの苦情が送られて来そうだ。


 「うまいか?いやー、帰るついでにスーパーに寄ろうと思ったんだけどよ?マスコミの奴らが邪魔で行けなかったんだよな!だから今日は出前で勘弁してくれや!!」


 「そんな気にしなくても大丈夫。留置所内で食べた飯に比べたら雲泥の差だよ。」


 伸二さんと向かい合いながら、OO家のチーズ牛丼を食べている。これを受け取る時、配達員の人が困惑した表情を浮かべていたのが面白かったな。全部マスコミと報道陣が悪い。


 「そういえば、雅紀が通ってた学校も大変な状況らしいぞ!!雅紀の奴も退学になったらしい。まぁ、雅紀が通っていた学校は、世間体を一番に考えてるような学校だから、ほとんど切り捨てたようなもんだな!」


 「俺もそうですけど、既に公式な書類には、前科みたいな感じで載ってしまってるんでしょ?社会的に見たら当たり前かもな。」


 「まぁ、そうだな。・・そうだ!!ちょっと気になったんだが、雅紀の奴はお前を貶める為に、人を雇って事件の証拠を消したんだよな?それなら、近藤家が真壁家のバックに着いてまで、民事裁判を起こした意味が分からないんだが、何か予測出来るか?」


 「・・確かに、意味が分かりませんね。例の舞波田コーポレーションとかが、実家の土地を狙ってるとして、近藤家が後見人になれなかったから軌道修正したとか?それだったら、証拠をそのままにして置いた方が都合が良い。何か別の目的があるのか?なんか、こんがらがって来ますね。」


 「だろ?雅紀の奴が近藤家としてではなく、個人的な恨みでやったんのかもしれんけど、流石にそれは無いだろう。一応、取り調べの時には『私怨でやった』って話してたみたいだが。」


 「・・・もしかしたら、本当にそうなのかも。あいつが普段から、短絡的な行動をしないよう注意していたのは知ってたけど、そろそろボロが出てきてもおかしくない頃だしな。」

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