第81話 運

午後1時

 伸二さんと面談した日から二日が経ち、ようやく二回目の面談をすることが出来ている。本当なら、前回の面談があった次の日にもやる予定だったが、台風の被害が思っていたよりも大きく、警察署に来るまでの経路が閉鎖されてしまった為、面談を見送ることになってしまった。

 伸二さんの計画では、遺産相続の件と医療少年院の説明を早めに終わらせるつもりだったらしい。運が悪い。


 「少年院についての説明はこれくらいで良いか。次は遺産相続の件なんだが・・ちょっとした問題が起きた・・・。」


 そう言って二枚の写真を机の上に取り出した。

 どちらの写真も倒壊した家の残骸らしき物を写しており、写真の背景はどこか見たことがあるような気がしていた。


 「実はな、この前話した家が先日の台風の影響で倒壊してしまったらしい。俺も業者の人から聞いただけだから詳しいことは分からない。それに、どちらの家も後ろに構えていた山で発生した土砂崩れにも巻き込まれてしまった・・。」


 さらに詳しい話を聞くと、山からの土砂崩れの被害は周りの住宅にも被害が出ていて、倒壊した家は7件ほどあるらしい。また、土砂崩れが発生したのは、台風が過ぎてから12時間程経った頃だったようで、遅れて発生した土砂崩れに巻き込まれた人は、奇跡的にいなかったようだ。

 青森県と静岡県。物理的に離れているにも関わらず、それぞれで土砂崩れが起きている事には驚きを隠せない。伸二さんも同じ気持ちのようで、本当に『運が悪かった』としか言えない状態だ。

 結果、両親の実家の遺産で残っている物は船だけとなってしまった。ちなみに、母さんの実家にあった畑は、土砂の下敷きになっている。

 前回見た写真では、台風にさらされたぐらいで倒壊するほど劣化していた様には感じなかった。もしかすると、白アリに食い散らかされていたのかもな。


 「立て直すことは出来るけど、どうする?立て直す場合、貯金の半分以上使うことになるけど。」


 「勿論、建て直しをお願いします。後、最低限生活に困らない程度の金額だけ残して、それ以外の金額以内ならどれだけ使っても良いので、出来る限り災害に強い建物にしてくれませんか?」


 財産の話をする度に家族のことを思い出してしまう。それならいっそのこと使ってしまった方が良いだろう。どうせなら、両親が大切にしていた物にな。それに、財産目当てのクソ共に一泡吹かせられるだろう。


 「残った船については、型が古く修理不可能な穴がいくつも開いていた為、財産の価値が無い物として見られている。とりあえず、大きな物はこれくらいだな。次は、裁判の証拠品の話だ。」


 やっと、事件の内容に進展が出て来たらしい。

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