第67話 目立ちたがり


 「ちょっとちょっと!勝手に押し掛けてきてふざけた事言わないでください!」


 「早く準備しろよ?俺達だって暇じゃないんだ。マスコミの対応とかで忙しいからな!w」


 慌てて伸二さんが間に入るが、こちらの話を聞く気は無いようだ。それに、こいつらの顔を改めて目の前にすると、以前病院にこいつらが来た時には分からなかったが、何の為に俺を連れて行こうとしているのか、どうしてこいつらはこんなにも嬉しそうにしているのかが良く分かった。分かってしまった。


 「なるほどな。悪いがお前らの世話になるつもりは無い。ここに居る伸二さんの方が安心できるからな!別にこっちが頼んだ訳でも無いし。後、勝手に俺の親だとか抜かすんじゃねえよ!!てめぇらがチヤホヤされたいからって、俺を利用すんじゃねぇ!!!」


 昔からこの一家は目立ちたがり屋だった。と言うか、父さんと母さんの親戚の人達は皆、性格が悪い。その中でも特に陰湿で付き纏ってきた家がこいつらだ。父さんの勤めている会社が建築関係だと知ると、『自分は医者だからエリートなんだ!』なんて言って、父さんを馬鹿にしていた奴と、母さんが元キャビンアテンダントで、自分よりも『綺麗だ』とか『美しい』と言われてる事が気に食わなくて、理由を付けては嫌がらせをしてきた奴、それと、学力や運動能力で俺に勝てないからって、親戚や友人全員にガセの情報を流し、俺を孤立させようとしてきた奴だ。そんな奴らが、何か利益が無ければこんなことはしない。


 「何だと⁉この俺が良いって言ってんだから早く来やがれ!!」


 そう言うと大は、土足で家に上がり、階段の近くに居た俺の腕を掴んで無理矢理にでも連れて行こうとしてきた。すると、伸二さんが間に割り込み振り解いてくれた。


 「おい!勝手に入って来るな!!俺とあんた達は、ほぼ初対面だろうが!!それ以上勝手な真似をするなら、警察を呼ぶしかなくなるぞ!!」


 普段の様子とは変わって相手に強い口調で問い詰めると、流石に分が悪いと感じたのか引き下がった。だが、俺を睨むのだけは止めないらしい。


 「ふん!ガキ一人で何が出来るんだ?どうせ、その男の脛でもかじって生きるんだろう?w無様だな!」


 「本当に、あの女に似て太々ふてぶてしい顔だわね!あんたも死ねば良かったのに!!」


 「ふっ!w調子に乗ってるからこんな目に合うんだぞ?前から言ってたじゃないか!ww大人しく俺の指示に従ってれば良かったのによ!!ざまぁねえぜ!ww」


 各々が好き勝手な言葉を残した後、玄関の扉を開け、人の声で騒がしい外に出ていった。


 「えっ?それだけ?俺を連れて行きたいが為に、態々、家に押し掛けて来たのか?と言うか、雅紀の野郎に至っては学校の方はどうした?今日は普通に平日だろ?」


 「あの人達と会うのは二回目だが、あそこまでの常識知らずを俺は知らないぞ。何であんなにも強気に出られたんだ?はぁ、また仕事が増えるな。」


 「なんかすみません。」


 「いや、俊隆が謝ることでは無いよww取り敢えず、床に付いた足跡を消さないとな。」 

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