第57話 マイナス50000人

午後3時

 昨日の夜は大変だった。

 FANHOMEに沢山の質問と悪口が届き、深夜に伸二さんから電話が来た為、寝不足だ。

 特に伸二さんに至っては『今からそっちに向かうから待ってろ!!』とか意味不明な事を言い出したから困ったものだ。それに、困ったと言えば俺の方も大変な事態になってるんだけどな。


 「これはどうしようも無いなぁ。せっかく10万人を超えて勢いに乗ってたのに。まぁ、調子が良い時ほど気を付けないといけなかったか。」


 昨日の夜からチャンネル登録者が減り始め、今は8万2000人にまで減った。しかも、昨日の配信には低評価が20万以上も付けられていて、『さっさと引退しろ』や『人殺しは刑務所に入れ』などのコメントが送られてきた。また、昨日の配信で話した、俺の推しのファンの人達からは、『犯罪者がファンだと迷惑だ』とか『お前のせいで、こっちに飛び火するからファンを辞めろ』などのコメントも送られてきた。


 「対処の仕方が分かんねぇ!別に謝罪する事でも無いしなぁ・・。俺、悪い事して無いし。それに、配信者にとって炎上は、登竜門みたいな部分もあるし大丈夫だろ。」


 のんびりと今後の事を考えながら、今日の配信サムネと枠を作る。


 「こっちの事情も考えないで、好き勝手言いやがって。本当にろくでもない奴らが多いことで!」


 サムネを作成している間にも、画面の右下に出てくる通知が止まらない。コメントの内容までは表示されていな事だけが幸いだ。

 『人の噂も七十五日』と言うことわざもあるが、現状を表すなら『虎の口より人の口恐ろし』って感じだな。ちなみに、昨日ことわざの本を読んだ。


 「ゴシップ系の配信者にネタとして扱われたせいで、余計に炎上が広がってるなぁ。まぁ、俺も他のVTuberをある意味ネタとして扱ってるから、文句の付けようが無いんだけどな。」


 一人でぶつぶつ言いながらもサムネを完成させた。どうやら、思っていたよりもストレスを感じているらしい。相手の顔が見えない分、精神的負担はそれほど大きくは無かったが、塵も積もれば何とやら。やっぱり、人間って怖いね。

 そもそも、『刑務所に入れ』とか『逮捕しろ』みたいなコメントがあるけど、それなら俺じゃなくて警察に言うべきじゃないか?まぁ、警察側は取り合ってはくれないだろうが。これで警察側から何か言われたら、動画にしてやろうww

 所詮、他人の事を心配できる奴は1万人、いや10万人に一人居るか居ないか。運が悪ければ100万の中に居ない時もあるからね。だから、人を信用するのは難しい。


 「『犯罪者』ねぇ。懐かしいな。」


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