第36話 部屋着

 「ありがとうございましたー!!」


 店員の快活な声を背に店から出る。


 「あー、腹いっぱいだ!もう食えねぇ。」


 あの後も一人で焼肉を楽しんだ。ここにはまた来よう。ただ、少々独り言が多かった気がする。VTuberを始めてから、前よりも独り言をする回数が増えている、気を付けよう。


 「次は何処行こうかなぁ。てか、こういうのは食事中に考えとけって話なんだがなー。っと、そうだ!服買いに行こう!服!部屋着が無くて困ってたんだよな!」


 配信者について調べた時に、『配信者をやっていると必然的に部屋で過ごす時間が多くなる為、快適に配信をする為に部屋着は自分に合った物が良い』と書かれていた。本当かどうかは分からないが。

 スマホで近くの『コロクロ』を探す。


 『コロクロ』とは、大手衣料品の製造小売りを一括として行っている企業である。俺が普段着ている服もコロクロで買った物だ。というか『コロクロ』と、同じような会社の『GB』で買った服しか持ってないな。

 運の良いことに、近くの通りにコロクロがあるみたいなので、そこに向かう。

 コロクロの前に来てみると、見覚えがある場所だった。確かアパートに引っ越す前に、伸二さんに連れてきて貰ったことがある場所だ。通常のコロクロの店舗よりもわずかに小ささを感じる建物だ。

 中に入ると左側がレディースコーナーで、右側がメンズコーナーだ。

 メンズコーナーの奥の方に、部屋着に良さそうな服が置いてあった。その中から手頃な服をいくつか選び、近くにあった籠に入れる。出来れば上下セットの物が好ましい。


 「黒かグレーが安定だよな。おっ!これフード付きで良い感じだな!」


 手に取ったのは、モコモコした寝間着みたいなやつだ。この手の服の方が普段着には丁度いい。

 何着か服を選んだ後、男性用の下着売り場へ向かう。

 値段を見て良さそうな物を選ぶ。下着に拘りは無い、強いて言うならトランクスが好きなことくらいだ。

 入口の近くにある会計に向かう。ラッキーなことに、無人の会計機が空いている。人と話さなくても良いから最高だ。


「えーと、バーコードをここに当てればいいのかな?」


 先程からこちらを見ている人達が何人か居て気になるが、商品を一つ一つ丁寧に通していく。あまり見られると困るのだが。商品の中には下着も入っているのだ、俺は自分の下着を見られて興奮する変態では無いので、せめて視線を逸らして欲しい。


 会計が終わった商品を袋に入れ、店から出る。


 「なんか、めちゃくちゃ見られたなww」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る