第25話 被害
午前11時
ベッドから起き上がりテレビを点ける。
首が痛い。寝違えたかな?
『次のニュースです!昨夜9時頃、世田谷区~~付近のマンションにて、傷害事件が起こりました。犯人の名前は草野 武夫、34歳、これまでにも同じような事件を起こし、警察の監視下にも置かれていた人物です。被害に遭った女性の名前は諸事情によって伏せますが、”VTuberとして活動しているカグヤ・ユリさん”だとのことです。駆け付けた警官により、犯人は取り押さえられましたが、警官のうち2名が負傷、そのうち1名が重傷を負ったとのことです。被害者に大きな怪我はありませんでしたが、精神面に問題を抱えてしまったらしく、病院で検査を受けているそうです。事件当時、犯人は自作したクロスボウと刃渡り13センチのナイフを所持していたらしく、現在取り調べを受けているようです。今後、詳しい情報が入り次第お伝えします。』
テレビから流れてきた情報に耳を疑った。
事件について気になり調べてみると詳しい事が分かった。
「ストーカーか。時々、被害に遭っている人が居るって聞くけど、ここまで大事になっているのは初めてだな。炎上に続いて事件が起こるとか、ユリさん大丈夫かな・・・。」
掲示板では、この話で大盛り上がり。
純粋に、ストーカー被害に遭ってしまった事に対する心配の声やこれからの活動に支障が出ないかとの意見が大半を占めている。だが一部では、『ざまぁ』や『当然の報いだ!』などのコメントが見られており、炎上の件について関りがあったVTuberのコメント欄にも一部の視聴者によって荒れているらしい。
「俺の配信も荒れなきゃいいけどな。」
事件のまとめ記事を読み進めていくと、気になる記事があった。
「何だこれ?『この犯人の部屋から、最近世間を騒がせている”ブラックハッカー”との繋がりがあった事が分かった。これからも同じような事件が増えるかもしれない。』か。ブラックハッカーって何だ?ただのハッカーとは違うのかな?」
ブラックハッカーについて調べてみる。
基本的にブラックハッカーとは『コンピュータやネットワークなどに関する知識や技術を悪質な目的の為に使う者』を指すらしい。だが、今回話題になっているブラックハッカーとは、そういう奴らが集まった集団組織の名前らしい。何をやっているのか分かりやすい組織だ。
「へー、大物女優も次々に被害に遭ってるのか。やばいな。公開未定の情報なども次々に流れているせいで、一部の企業は倒産寸前にまで追い込まれてるのか。」
情報戦略が主流となっている現在、他の企業に自社の情報が大量に流れることは、経済の混乱を引き起こすかもしれないらしい。
「まぁ、次々に似たような商品や生産の取り止めなどが相次げば当然よな。下手したらリーマンショックの再来になるかもしれないな。」
勿論、流れる企業の情報全てが良い事の筈が無く、合成写真やガセの情報で企業にダメージを与えている。特に大手飲食チェーン店なども被害に遭っているらしく、犯人が見つかり次第に裁判に持ち込むそうだ。
警察なども総力を挙げて捜索しているらしいが、見つからないらしい。
ブラックハッカーがターゲットとする相手は様々で、人気歌手のガセ情報を流したと思えば、次の日には建設会社の評判を落とすような情報を流しているらしい。要は見境が無いという事だ。
「頼むから俺の方にまで関わって来るなよ。せっかくいい調子に伸びてるんだから!」
『出る杭は打たれる』という言葉があるが、俺自身まだ杭すら出ていないと感じている。収益化が通ってから数日。ちょっとくらい安心して配信したい。
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