第7話 目標

午後7時30分

 今日もいつも通り雑談配信をしていた。昨日はチャンネル登録者が1000人を超え、FANHOMEのフォロアーも、もう少しで1000人を迎えそうになっていた。時々、『〈ゲームに集中したら?〉』のようなコメントが見られる時があるが、最初のチャンネル登録者であり、毎日配信を観にきてくれている『イレイザー』さんに、モデレーター権限を渡して、不快なコメントなどを消してもらっている。

 事前に配信の内容について説明していた為、voltex雑談配信に肯定的な意見が大多数を占めている事も有難い。

 今では一種の掲示板のような扱いもされており、荒らしを除いて快適な配信を行うことが出来ている。

 そんな中、一つのコメントが目に付いた。


 〈VTuberとしての目標とかってありますか?〉


 このコメントをしたのは、『イレイザー』さんだった。

 そもそも、VTuberとして活動しようと決めた理由は、就職することも難しくやりたいことが見つからなかった、ということが大きい。『何となく始めてみた』というやつだ。


 「今のところ目標というものは無いですね。生活に困って何となく始めてみました。」


 ただ、あまり正直に言い過ぎたかもしれないと考えていると。


 〈就職しないの?〉

 〈低学歴とか?草〉

 〈低学歴でも就職は出来るぞ〉

 〈アルバイトでもすれば?〉

 〈みんな落ち着けって、何か理由があるかもしれないだろ〉

 〈収益化まだ通ってないだろ、大丈夫なんか?〉

 〈目標は一つぐらいあった方がいいんじゃない?」


 案の定、コメント欄で議論が始まってしまった。とりあえずコメント欄を落ち着かせることにする。


 「まぁ、俺にもいろいろ事情があるんで、あんまり詮索しないで貰えると有難いです。この配信は他のVTuberの方達の話をするものなので。後、生活の方は問題ないので、心配は大丈夫です。でも心配してくれて有難うございます。」


 〈了解〉

 〈生活出来るならよかった!」

 〈とりあえず別の話しようぜ!〉

 

 思ったよりも話の転換がスムーズに出来て良かった。

 その後も、特に問題が起きることも無く配信を終えることが出来た。



 そろそろ寝ようかと思っていた時に、これからの目標について考えようと思った。ただ配信するだけでは、面白味が無いことと、あった方が配信に色味が付くんじゃないかと、考えたからだ。心のどこかで、目標を欲していたような気もする。



 「これからの目標か、とりあえずは収益化とチャンネル登録者1万人かなぁ。」


 GETafterの収益化を通すためには、チャンネル登録者5000人と動画等の総再生時間が3000時間超えていることが条件だ。

 他のVTuberの方達の中にはボイス収益等もある。俺がボイスを出せる程の技術と声の良さがあるわけではないので、俺には関係ない話だろう。


 「とりあえずコラボとかやってみたいなぁ。」


 色々なことを考えている内に、夜も更けていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る