第72話 緑の巨大樹と..

私は「時の加護者」アカネ。

アコウの復活、「運命の加護者」シャーレの帰還、そして「法魔の加護者」がツグミであり、そのトパーズがジェラである事実。いろいろな事がありすぎて、私の頭はパニック状態。でも、未だにラヴィエは危険な状態。どうかツグミ、ラヴィエを治して!


—太陽の国レオ ラジス峡谷―


ツグミは癒しの魔法でラヴィエの傷を癒そうとするも、ハクアの容態が気にかかり集中できずにいた。


「ダメ!! 今の私じゃ治せない。だんだん2人の命の灯が小さくなっていく! 2人を救いたいのにっ!! 」


—きゅ~ん、きゅ~ん


ツグミの頬を濡れた鼻がつつく。


そこには背中に結月を乗せたソックスがいた。


身をかがめたソックスから降りた結月は、手探りをしながらツグミに近づく。


「その力、私が高めることが出来ると思う。私を使って! 私の能力は人の力を何倍にもすることだから」


「どうすればいいの? 」


「私に向かって、その力を開放すればいい」


その時、シャーレは意味深な事を呟いた。


「いよいよ始まるぞ、ルル。お前の描いたとおりだ」


結月はツグミの手を取り、『さぁ、あなたの癒しの魔法を私へ』と促す。


「 ——□□□□□.. □□□.. □□! —— 」


ツグミは何かの声で叫んでいるが、その言語は聞き取ることができないものだった。


ツグミの薔薇色の魔法力は緑色に変化し始め、エメラルドの激しい光を放った。


癒しの魔法を最大限に放出したのだ。


そしてそれは手を繋いだ結月へと伝播すると、結月の両の瞼がゆっくり開く!


天を仰ぐ結月の瞳からエメラルドの光が立つと、やがてそれは巨大な柱へと変わっていく。


柱は天空で大きく広がっていく。その姿はまるで巨大なサイフォージュの樹が聳え立っているようだ。


同じ瞬間、世界中の暗欄眼を持つ子供が天を仰ぐと、同じようにサイフォージュの巨樹がエメラルドの輝きを放つのだった。


星はエメラルドに輝き包まれ、世界中にサイフォージュの香りが広がる。


傷ついた兵士も、民衆も、そしてラヴィエもハクアも傷が見る見るうちに修復されていくのだった。


やがて暗欄眼の光はエメラルドから白色へと変化するとさらに輝きは火花が散るように激しさを増していく。


「 私は——————— ———  ———!  」


その光は惑星の全ての色を白へと変えてしまうほど凄まじい。


そして光の全てが結月の瞳へ吸い込まれるように戻ってくるのだった。


結月はその場にバタッと倒れる。


「ああ、おはよう、アカネ」


ラヴィエが目を覚ました。


「ラ、ラヴィエーッ!! 」


私はラヴィエを思いきり抱き締めた。


「痛い、痛いよ」


「ラヴィエ、待たせたね。ごめんよ」


素に戻ったアコウがラヴィエの手を取り優しく言った。


『ほんとよ! 』と言うと、ラヴィエはアコウに抱き着いた。


そしてアコウの胸に顔をうずめながら『お願い、もう何処にもいかないで!』と言った。


頷いたアコウの髪が黒髪に戻っていく。


「さて、アカネよ。こちらも一気に片づけるか」


「でも、シャーレ、私はもう力を出せないの」


「おい、おい、私を誰だと思っている? 『運命の加護者』シャーレだぞ。本来の私の力を今、開放するぞ」


シャーレの身体がきらめきを増していく。


「ぐぁぁあああああ! 」


雄叫びと共に銀色の光線が天と地に放出される。


何てことだろうか。


凄まじい力が私の身体にも流れて来る。


熱い!! 体が! 血が!  熱い!!


手が..手が何かに繋がっているような感覚だ。


その手を天にかざすと流星が激しい光を放ちながらこの右手に入り込んだ。


その流れ星はシルバーの懐中時計だった。シェクタ国、西の塔にて白亜に管理されていた懐中時計が正当な持ち主の元へ帰って来たのだ。


右手を見ると浮かび上がった時計の針が喜ぶように高速で回転している。


私はここの中で『おかえり』と言葉をかけた。


すると、その瞬間に天と地と全ての空間が時を止めた。


***


「アカネ、聞こえるか? 」


「その声はシャーレ? 」


「そうだ。私は『運命の加護者』あらゆる運命をみる者だ。故に私は『運命は成るべくして成る』と思っている。だが、今回は特別なのだ。この星の不具合を正さなければならない。それは『ハクア』だ。そいつはお前が連れてきてしまったのだ」


「どういうことなの? 」


「それをお前に見せる。そしてどうすべきかお前が決めるのだ。未来を開拓し、時を刻む『時の加護者』の責務として」


ここは本来、「運命の加護者」のみ入ることが許される『運命の次元』だった。

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