第55話 置手紙
私は「時の加護者」アカネ。
ナンパヒ島にて、島の役目、「3主の加護者」の使命を知った私たち。そしてクローズを見つけ出す目的を果たした。問題はシャーレを亜空間から呼び戻す方法だった。それには「アリアの剣」にと使い手のアコウの協力が必要なのだ。しかしアコウは....
—ナンパヒ島—
私たちは、クローズを連れてナンパヒ島の中心部・「繭」から湖へとつながる洞窟を抜けた。幻想的な青の中に白色の光のカーテンが揺れ動く。
上を見上げながら水面から顔を出すと、湖で遊ぶ子供たちの元気な声が聞こえてきた。
ライン、ソックス、ライラだった。
「行け! 行けぇ! 」とはしゃぐのは、何かの背びれに捕まって湖を周るルッソだった。
背びれの主は白いオキゴンドウだ。
あの白鯨と同じ金色の瞳をしている。
「まぁ、ルッソったら」とセイレーンは微笑む。
「次、ソックスね! 」
「お前、さっきライラと乗っただろ。次は俺だよ! 」
ソックスが私に気が付くと、元気いっぱいに声を上げた。
「あ、おねえちゃんだ! おかえりー!」
湖から上がると、水はスルリと身体から流れ落ち、すべて湖へ戻っていく。ここの島は水にさえ意識があるように思えた。
「あなたたち、もしかして海から洞窟をくぐって来たの? 」
「そうだよ。ルッソがね、ここで待っていればお姉ちゃんたちが帰ってくるって教えてくれたから」
ルッソが『へへへ』といたずらっ子のような笑顔をみせる。
この子たちを見て、漠然とした私の心に『この世界を崩壊させてなるものか』という決意がさらに強くなっていくのだった。
・・・・・・
・・
セイレーンとルッソと別れ、私たちは浜にあるルル診療所へ戻る。
するとルルさんが慌てて家を飛び出してきた。
「どうしたんですか? 」
「ラディが! ラディがいないの! 」
激しく取り乱すルルさんの手には1枚の書置きが握りしめられていた。
[ ルルさん、僕はどうやら行くべきところがあるように思います。はっきりと思い出せないけど、僕は何か使命の途中にあるように感じるのです。ここは平和だ。この美しい浜で過ごした数週間は、心から幸せだと思えました。本当です。ルルさん、僕はまたここに帰ってきます。そしたらまたおいしいご飯を食べさせてください。あなたの息子ラディより ]
「ルルさん、マジムさん達は? 」
「最初、あの方たちがいなくなって.. 私が周辺を探していたら、ベッドで寝ていたはずのラディまで居なくなってしまったの.. ラディ.. 私のラディ..」
(そうか..マジムさんはきっとアコウの記憶が戻りつつあることに気が付いたんだ)
マジムさんとアコウの間に何かがあったとすると、やはり原因はあの盲目の女の子..
「シエラ、クローズ、今日はもう日が暮れる。今夜はルルさんのところで一晩過ごそうよ? 」
クローズは先を急ぎたい素振りを見せたが、シエラに説得された。
私にはどうしてもルルさんをひとりにすることができなかった。
その理由はもしも私がこちらの世界に来ている間に現世の時間が5年、10年経過してしまったらどうしよう。
学校は? 友達は?
それよりもお父さんやお母さんは行方不明の私に心を痛めているに違いない。悲しんでいるに違いない、このルルさんのように。
そう思うとルルさんをひとりにしておくことができなかった
翌朝、私は断られるかもしれないと思いながらライラに頼んだ。
必ず迎えに来るから、しばらくの間だけルルさんとこの浜で過ごしてくれないかと。
ライラは快諾してくれた。
元気なライラと一緒ならばルルさんもすぐ元気になるだろう。
ルルさんとライラに見送られると、私たちは『未完の白浜』を離れ大陸と島の接岸部へ向かう。
やがて、私たちは太陽の国レオに潜むレジスタンスと出会うのだった。
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