第36話 シドの羽根

私は「時の加護者」アカネ。

私たちはポルミス島を目指す。しかし、その前に私の気がかりを解決していきたい。それは光鳥シドが元気かどうかだった。私たちがシュの山の麓でそんな話をしているとラワン部隊が私たちを森の中へ案内してくれた。そして私たちを待っていたのは泉から現れた女性だった。


—カイト国 シドの泉—


「いったい君は誰だ?」


そう、シエラが訪ねると、彼女は言った。


「お久しぶりです。アカネ様、シエラ様、このような姿で失礼いたします。私は光鳥シドです。今はその身を泉の精霊シドへと変えております」


「ええっ! あなたも殺されてしまったの?」


「いいえ、私は自ら姿を変えました。母ハシルが光鳥として死を迎えるも、ドライアドとして存在していることを参考に、私も姿を変えました。恥ずかしながら白亜から目を背ける為です」


シドは、輝く水色の髪に肌白く美しい20歳くらいの女性の姿をしていた。


「よかった。タイランドにいるドライアドはあなたを心配しているのよ」


「そうでしょう.. この泉の精霊の姿は私の存在を隠すためですから。もしも母に会うことがありましたら私の無事をお伝えください」


「うん。あなたが美しい女性になっていることも伝えておくわね」


「アカネ様、この先、ポルミスに行かれるのですよね」


「驚いた! あなた達は何でもお見通しなのね」


「いいえ、そうではありません。母が永久蝶を通じて世界を見ていたように、私も生あるものの目を借りることがあります。フェルナンの闘技場の柱に住む鴉が私に教えてくれました」


「そんなことよりも、光鳥クリルはどうなっているか知らない? 鳥の目を借りるなら知っているんじゃない?」


「クリルの姿は見ておりませんが、おそらくは私と同じように身を隠していると思います」


「そっか。それを聞いて少し安心したよ。じゃ、行くね」


「アカネ様、あなたは自分のことよりも私たちを心配してくれるのですね。ありがとうございます」


「だって、あなた達が消えてしまったらドライアドがかわいそうでしょ」


「あの.. アカネ様、これを持って行ってください」


シドが水色の美しい髪を1本抜くと、それは水色に光る羽根へと変化した。


「ポルミスにはセイレーンという古代の鳥が住んでいます。私のこの羽根を水面に浮かべれば、そのセイレーンを指し示します。きっとアカネ様の役に立つでしょう」


「わっ、ありがとう! これでポルミスの場所がわかるわ」


「旅のご無事をお祈りしております」


そう言うと、シドは泉の中に姿を隠し、再び景色は鬱蒼とした森の中に変化した。


[ サーシャよ、アカネ様、シエラ様を外までお送りしてちょうだい ]


森にシドの声が木霊すると、茂みから再びラワン部隊サーシャが姿を現して、王国カイトの国境まで案内してくれた。


「お急ぎください。白亜の警備兵が近くまで来ています」


「サーシャ、ありがとう。クリスティアナにもお礼を言っておいて」


「 ですから—」


「はい、はい、ラワン部隊の独断だったわね。じゃ、行くわ」


「 ..旅の無事を祈っております。きっとクリスティアナ様もそう申し上げると思います」


「うん」


私たちはラインとソックスの背に乗ると、風を切ってギプスへと走った。

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