第34話 次にすべきは

私は「時の加護者」アカネ。

鍾麗衣の塔での闘神シエラと白亜幹部バンクの闘いはシエラの圧勝だった。すべての妨害を取り除き、私はラヴィエとの再会を果たそうとしたが、ラヴィエは私に会うことなく塔の中へ戻っていってしまった。ラヴィエの耳には私がジイン王を殺害した報告が入っていたのだ。それでもラヴィエが私を信じる気持ちを持ってくれていることを執事長のカルケンさんから教えてもらった。


— 王都フェルナン 鍾麗衣塔 —


ソルケは仰向けのまま語った。


「やはり.. お前らは強いな。『闘神』に『時の加護者』か。私は.. 私は、昔から運命のシャーレ様が歯がゆかった。『秩序の加護者』は、ただ秩序を見守る。そして『運命の加護者』も運命を変える行動をしない。何かを変えるのは、いつも『時の加護者』だけだった。だから、あなたが、この世界に現れないのなら、私が動こうと思ったのです」


「ソルケ、お前は昔から先走ってばかりいる」


「否定はしないよ、シエラ。でも、さすがだ。やはり時を動かすのはあなた方なのだ。アカネ様、ハクアの狙いは復讐だ。しかもかなり根強い恨みだ。あいつの行動は全てあなたに備えている。まずはシャーレ様を助けてください」


「でも、シャーレはハクアに亜空間に落とされたんでしょ。救い出せるの? 」


「ははは。それはデマです。あの方は自ら亜空間に入ったのです。そして鍵となるのはクローズです。この鍵を開けるのがどれほど大変かはわかりますよね。しかもクローズは行方をくらませた」


「なるほど。それでクローズは神出鬼没の国ポルミスに身を隠しているのね」


「そうですか。やはりクローズは賢い。愚か者の私とは違う」


その言葉に執事長カルケンが言った。


「それは違います。ソルケ様。私は気が付いていました。あなたはラヴィエ様を見張る任務を王国シェクタから受けたと言っていましたが、あなたはラヴィエ様を守っていらっしゃいました。敵を欺きラヴィエ様を守るあなたは賢明な方です」


「ふっ、ばれていたのか。やはり私は二流だな。ああ、私にその任を与えたのはシェクタ国の王子ブレスだ。私は彼に借りがあったからな。その借りの為なら私は何でもやる」


「ソルケ、いつになく熱いな。それに顔が赤いぞ。どうしたんだ? 」


「よ、余計なお世話だ! ラヴィエは引き続き私が守る。お前たちはさっさとクローズを探しに行け」


「うん。めちゃくちゃ強いソルケならラヴィエを安心して任せることができる」


そして、私たちは王国ポルミスに潜むクローズを探しに行くのだった。


海に浮かぶ神出鬼没の王国。


海の情報は海の男からだ。


私たちはギプス国に向かいラオス船長の知り合いを頼ることにした。


「アカネ、お前は闘い方を改革する必要がある。その為にライラを連れて行くんだ。ライラの予測不能な動きはお前の役に立つ。俺はヴィタニマの村へ帰って村を守らなければならない」


そう言うとロウゼはライラへ向きあい肩を抱き寄せた。


「ライラ、アカネを頼むぞ」


「うん、パパ。 ヤンバへ私は元気に『時の加護者』アカネ様と一緒に世直しに行ったと伝えといて」


ライラは元気の良い笑顔を見せた。


「ああ、わかった。伝えておくよ」


私は無防備になっているフェルナン国の警護をジェラに頼んだ。そしてツグミには王都フェルナンに残ってもらう事にした。


彼女にはやってもらわねばならない事があったからだ。


「おねえちゃん」


不安そうにするツグミを思いきり抱き締めた。


「大丈夫。必ずまた会えるから。それにツグミには強いジェラがついているよ」


「それはとても不安.. 」


それを聞いてずっこけるジェラに思いきり笑った。


こんなに笑えるなんて.. そうだ、私は隣にシエラがいるだけで、こんなにも余裕ができたのだ。


何はともあれ、これからシエラ、ライラ、私の旅が始まるのだ。

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