そのまま

@LIAR27

そのまま

調べ物をしたり夢や希望を乗せて情熱をぶつける

そこには願った通りの旋律はなかった

僕は救いようもなく寝転がる


一度起きて何気なく観たお笑い芸人のいい話

弟が癌になってステージ4

所謂、最終段階

意識も朦朧として闘病する

その兄である芸人は遠く離れた東京にいて、故郷に戻る事はできない

夢を諦めたとして何も快晴には向かわない

したとしてもお金を送ることしかできない

なら優勝したお金で弟を救いたいと願った

だが名のある賞レースで結果は準決勝敗退

目の前が暗くなった

弟からLINEがあった

「応援してる」

意識が儘ならぬ弟からのLINEに彼は母に問うた

「なんでLINEができるんだ?」

「貴方の準決勝を絶対に観るんだと言うことを聞かないもんで」

彼は泣いていた

「お兄ちゃんは絶対に優勝するんだ、だから僕も闘病を勝ち超えていくから一緒に勝っていこう」と

兄は今負けた悲しみを忘れて勇気を出し次は必ず優勝すると決めた

弟は闘病を勝ち超えて今は再発せず回復に着実に向かっている

次は兄の番だ

という話

僕は涙が止まらずにその後流れるお笑いの面白い話も何も聞こえなくなっていた

自分にも弟がいて弟が好きでいたから感情移入してしまった


その話を聞いてまた夢への一歩を踏み出すが

そこに自分の思う音は録音できていなかった


僕は情けなくまた寝転がる


天を仰ぎみれば真っ白な天井

他の部屋から漏れた光がすりガラスの窓を仄かに色付けている

荷解きがされていない段ボールを見ながらフリーダイヤル番号の当て字に嫌気が差す

ご飯は食べるのも面倒で昨日のお昼に行ったつけ麺のミニ丼付きのものからシャトレーゼで買ったどら焼きしか食べていない

お茶も掌に収まるサイズのペットボトルのものしか飲んでいない

毎日朝に飲む薬でさえ飲んでもいなかった

意外と人は食べなくても飲まなくても生きていられるもんなんだなと思ったが

たかが1日や2日は大したことないのだろう


自分らしさってなんだろう

僕は僕らしく君は君らしくって初めから探す様なものではないんだと思うんだという歌が頭の中に流れる

でもそれを探さない自分はずっと何にもならないんじゃないかって少し頼りなく感じる


今を支えてくれる人のことを思い出した

その人は僕に何のアドバイスもないし何の期待もしていないけど

ただLINEはしてくれる

その些細な本人も気づかない優しさが今僕が生きてる原動力になっているのかなと

心の中で好きな人が笑顔を向けてくれた


人は沢山悩んで考えて笑って泣いて過ごしてる

だけど今がきっとその完成なんだろう

人はいつだってその時その時が1番完成であり

いつだって更に良くなる様にと未完成を埋めたがる

未完成の完成であり完成の未完成

そのままの自分で過ごしていこう


すりガラス越しに色をつけてた窓が暗くなる

僕はまた夢への一歩を踏み出していく

そこにある旋律もどこか力強かった

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