ななしゅうしないと開かない箱

筆入優

『ななしゅうしないと開かないぞ』

 山奥で箱を見つけた。

 箱に白いお札が貼られている。お札の上には黒い文字で『ななしゅうしないと開かないぞ』と書かれていた。

「はは、どういうことだよこりゃ」

 俺は趣味で山に遊びに来ている大学生であり、成人済みだ。そんな人間が子供騙しの箱に翻弄されるべきではないのはわかっていた。しかし好奇心には勝てず、箱を開けようと頑張った。箱の周りを七周したり、七回、そこら辺の石でシュートを打ってみたり。しかし一向に箱は開く兆候を見せなかった。俺はこいつについて研究しようと、家に持ち帰った。

 それからは狂ったように開くための試行錯誤を繰り返した。

 そんな下らない夏休みを送っていたある日のこと。突然、箱が開いたのだ。なんのまえぶれもなく。

『バカだなあ、テメェ』

 開いた扉の奥にはコミカルなフォントをした虹色の文字が浮かんでいた。

 ああ、そうか。そういうことか。書かれているとおり俺はバカだった。

『ななしゅう』について深く考えすぎていたのだ。

 バカにされて気づいた俺はカレンダーを確認した。

 ——そうか。今日はこいつを見つけた日から『七週目』じゃないか。

 

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ななしゅうしないと開かない箱 筆入優 @i_sunnyman

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