第二十八話 破滅が完全に回避された件

「「「あーおーげばーあおしー」」」


 数年後、陽陰学園の卒業式。


 体育館に集められた三年生――俺たちのクラスが合唱していた。


「生徒代表、結崎ひよのさん」

「はい」


 名前を呼ばれたひよのさんがゆっくりと壇上に上がる。

 遠目から見ても、凄く綺麗だ。


 マイクの前に立ち、背筋をピンと伸ばして口を開いた。


「結崎ひよのです。卒業、おめでとうございます。といっても、私もですが」


 会場の笑いを誘う。掴みもばっちりだ。

 それから一転して、表情が真剣になる。


「私たちは今日、この学園を卒業します。今まで多くの出来事がありました。辛いこと、悲しいこと、だけど、思い返せば楽しい思い出ばかり思い浮かびます」


 その通りだ。

 警察に捕まってから、俺は皆のおかげもあって破滅フラグを一度も迎えることはなかった。


 燐火、未海、知宇、悪童、BL、ひよの、天堂。

 後、リイナ、玲、みー、瑠未、太郎に二郎、そしてBBS、ああ、こいつらの話はしてなかったか。


 それからひよのさんは少しだけ悲しげに言う。


「私は……元々人見知りでした。ですが、ある方に助けられたことをきっかけに、自分に自信を持つようになりました。大勢の友達も出来て、入学当初では考えられなかったくらい、この学園を去るのが悲しいです」


 ひよのさんは、めずらしく言葉に詰まりながら言った。

 意外だった。ある方、というのが誰かわからないが、そんなことがあったとは。

 しかし俺もひよのさんと出会わなければこんなことにならなかっただろう。

 今は感謝の言葉しかない。


「感謝しています。――藤堂充さん」


「え!? マジ、藤堂なの?」

「嘘……言わされてる? でも、藤堂くん変わったもんね」

「まじかよ。でも、藤堂イイヤツだもんな」



 大勢の声が聞こえるが、以前と違って陰口を叩くやつはいない。

 それも皆、仲間のおかげだ。


 そして――。


「充さん、私は好きです。あなたのことが――大好きです」

 

 全校生徒の前で、ひよのさんが告白してくれた。


 俺の答えは――。




 帰り際、見知った仲間たちにお別れを言って、ひよのさんと二人で桜並木道を歩いていた。


「綺麗ですね。あの時、助けられた時を思い出しますよ」

「俺もです」


 そして俺は、少し強引にひよのさんの肩を掴んだ。

 抱き寄せて、見つめる。


「好きです。ひよのさん」

「ふふふ、ついさっき全校生徒の前で好きだと返してくれたばかりじゃないですか」


 自然と笑みを浮かべるひよのさん。


 そして俺たちは、そっちと唇を重ねた――。


 ◇


 四月――。


 大学の試験を無事に合格した俺は、学校の前に立っていた。

 無事に入学式を迎えた。


「感慨深いな……」


 表札には、『陽陰よういん大学』と書いてある。

 その瞬間、脳内に情報が詰め込まれいるような感覚に陥った。


 あれ、なんかこれ、デジャブじゃね?


 そ、そ、そ、そ、そういえば……なぜ今まで思い出せなかったんだ。


 ……陽陰よういん学園は爆発的人気だった。

 そして、2が出たんだ。


 破滅を回避した裏エピソード、今度は藤堂充が主役で……また破滅の道に……。

 まさか!?


「大丈夫ですよ、充さん」


 だが、隣の女性が手を握ってくれた。


「……ありがとう。ひよのさん」

「破滅にはならないです。私がいるので」

「な、なんで破滅を……知ってるの?」


 ひよのさんは顔を向け、菩薩のように微笑んだ。


「答えたほうがいいですか?」



「いや――ひよのさんとなら、乗り越えられる気がする」


 さあ行こう。未知の世界へ踏み出そう。


 そして、校門に足を踏み入れる。


「魔法、世界、火、炎、そして水!」


 その瞬間、魔法のローブを携えた女性が、先端に宝石が付いた杖を構えていた。

 そこから、炎と水が渦巻いて飛び出した。


「え、なにこれ?」


 あれ、なにこれ? 恋愛ゲームだよね?


「勇者藤堂充! そして魔法使い結崎ひよの! 待っていたわよ!」


 謎に現れたセクシーおねえさん。


「まずは魔法の適正から調べるわ。着いてきなさい」


 え? なんて? 魔法っていった?


「行きましょう、充さん」

「え?」


 あれ……そういえば……思い出した。

 『陽陰よういん大学』は、前作のキャラクターを更に濃くして、魔法要素を踏んだんに盛り込んだ現代ファンタジーだった。

 異能力バトル、クラス間の争い、魔物、そして――恋愛。


 む? あそこの広場に誰かが絡まれている。

 あれはたしか――『陽陰よういん大学』のヒロインだ。


「やれやれ……また大変なことなりそうだ」


 そうして俺は、またとんでもない面子と破滅を回避するために奮闘するのであった。


 けれどもきっと大丈夫だろう。


 俺の隣には、最強のパートナー結崎ひよのさんがいるのだから。


「充さん、行きましょうか」



 =======完=======


 これにて一部完結となります。

 二部に関してはすぐに再開する予定はありませんが、ブクマをそのままにしていただけると更新通知がすぐにわかると思います。


 この作品は、悪役転生を描いてみたい! 変なキャラをいっぱい出したい! とゆう思いから書き始めました。

 当初はもっと恋愛要素強めの予定だったのですが、キャラの濃さに振り回されてしまいました笑


 完結まで楽しく描けたのは読者の方々のおかげなので、改めてお礼を申し上げます。

 他にも作品も書いているので、よければそちらもご覧いただけるとありがたいです。

 それでは、最後まで今作をありがとうございました!


 良ければ、★★★や感想頂けると嬉しいです😊

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【完】恋愛ゲームの悪役に転生した俺、なぜか正ヒロインに溺愛されてしまった件。そしてそのヒロインが、ヤンデレストーカーでした。 菊池 快晴@書籍化進行中 @Sanadakaisei

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