Ep.1 絡繰の卵と慌ただしい朝

「ん…何?『ミカナ』」

「何って…もう朝の鐘が鳴り終わりましたよ。大きな寝坊ですよ。

「んー…ちょっとくらい…いいじゃん…」

「今日は技巧士の研修に行くんでしょう…!?」

 柔らかな優しい日差しが差し込む窓辺に古い木製のベッドがある。そこに、一人の少女がいた。何かと言い争っている様だ。

「まだ遅刻はしないよぉ…もう少し…だけだから…」

「そんなこと言って前遅刻したの覚えてないんですかー?」

「はいはい……」

 時計が正午の1時前を知らせる。布団がモゾモゾ動き、少女は着替えを始めた。彼女の名前はランタン。この街の『技巧士の卵』と呼ばれる存在だ。まだまだ卵なので未熟だが、それにしては十分に絡繰が作れる。ただ…寝坊してばかりで成績は悪い。

「これ以上出席落としたら落第ですよ!早く早く!」

「わかってるってぇ…」

 そう言って『卵』ランタンは急いで支度をし、外へ飛び出して家の隣の乗り物へ飛び乗った。と思ったらすごいスピードでそれは飛び出していった。

「わわ!危ない危なーいっ!」

「スピードがおかしいですよ…!?落としてくださいっ!ブレーキかけて!」

「わかってるって…!」

 幸い、道ゆく人々にはぶつからなかったが、技巧の学校の門まで着いた時には怒り心頭なのが見てとれるくらいの先生が仁王立ちしていた。

「え、えーと…先生おはよー。あははー…」

「おはようございます、ランタンさん…?さっきの暴走車について説明して欲しいので、是非ついてきて欲しいですが…?」

「ゆっくり話すよー…」

「いってらっしゃい。ランタン。」

…こっぴどく叱られた。それはそうだ。危うく人が怪我するところだったのだから。

 こうして、彼女の学校生活は説教から始まったのだった…



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