変人と言われた俺は、ラブコメができないと思ったか?
あくらさき駅
プロローグ
中学校も3年に上がったばかりの春、過ごしやすい気温でつい眠たくなってしまう今日この頃、俺こと
理由は俺の想い人、
小さい頃の菜由里は「れんくん、れんくん」と言いながらひまわりのような可愛らしい笑顔で俺の後ろをついてきていた。俺も菜由里のことは「なっちゃん」といい、暇さえあれば一緒に遊んでいた。周りから見てもかなり仲は良かったと思う。
今でも菜由里は俺のことを「れんくん」と呼んでくるが、俺は中学に上がるのを機に「なっちゃん」ではなく“菜由里”と名前で呼ぶことにした。
単に恥ずかしいとかいう気持ちも多少あったかもしれない。でもわかってほしい。中学生とは難しい時期なもので、男女であだ名で呼び合うと揶揄うやつが出てくるのだ。
実際、小学校の最後あたりでは茶化してくる奴らがちらほらといた。だから、菜由里に迷惑がかかると考えた俺は中学生になる際にやめようと決めたのだ。今では普通にあだ名のままでも良かったかな?とも考えたが、もうすぎたことだ。異論は当時の俺に言ってくれ。
とまぁ、菜由里にそのことを伝えると少し寂しそうな顔をしていたが、なぜ俺が名前で呼ぶことにしたのか素直に理由を話すと「わかった。でも私はれんくん呼びのままでいいよね?」とゴリ押しされ、結局俺が名前呼びになっただけで意味がなかった。
まぁ“れん”も”蓮斗“も変わらんか。一文字違いだしな。誤差だな!
昔話はこれくらいでいいだろう。中学に上がったあとも、今までと変わらず菜由里は仲良くしてくれた。
だから必然だった、菜由里を好きになるのには。自覚するのにそう時間はかからなかった。自覚してからは、菜由里さえいればいいと思っていた。それくらい好きだった。菜由里も俺のことを受け入れてくれていると。俺のことを好きだと思っていた。
だけど。そんな想いはただの幻想だと。夢物語だと。一方通行でしかないと思い知らされた。
無事にプレゼントを購入し、帰ろうと店を後にしたときだった。
ふと前方に見覚えのある女性と知らない男性が笑顔で歩いていた。
ちょうど帰るところだったのだろうか、手には品物が入ってるであろう紙袋を持っていた。
見て見ぬ振りをしその場から離れることもできたが、無意識に近づき声をかけてしまった。
「な、なゆ……り?」
菜由里であろう人物はビクッとし立ち止まった後、ゆっくりと振り向いた。
「れんくん?」
ずっと聞いていたいと思っていた声と、数えきらないほど呼ばれたあだ名で疑念が確信に変わる。
他にも言いたいことはあったが、俺は率直に菜由里に問う。
「デートか?菜由里」
「違うよ!れんくん!」
「男女が仲良さそうにショッピングモールに遊びにきている。これのどこが違うんだ?」
「だから違うの!」
「まさか、兄妹とは言わないよな?菜由里には兄も弟もいないはずだ。」
「だから違うの!お願いだから話を聞いて!」
冷静に対応しているつもりだが、正直今すぐにでも逃げたしたい気分だ。胸焼けによる気持ち悪さで、言葉を発するのも辛い。
「れんくん!話を聞いて!!」
胸やけに苦しんでいると、菜由里が叫ぶ。
菜由里の声を聞いた瞬間先ほどの光景を思い出す、楽しそうに笑っていた菜由里の顔を。
もう限界だった。
今すぐにでも胃の中のものをぶちまけて楽になりたかった。
「お幸せに!」
だが公衆の面前で吐くわけにもいかず、とっさに出た祝福の言葉と共に俺は気づいたら走り出していた。
後ろで菜由里が何か言っていたが、それを聞いている余裕はなかった。こんなことになるのならば、見て見ぬふりをすればよかったかもしれない。
今更後悔しても遅いとわかっているが、考えるより先に身体が動いてしまったのだからしょうがない。
吐き気を催しながらもなんとか家に帰り、自分の部屋に入るとすぐさまプレゼントだったものを無造作に床に放り投げ俺は電池切れの人形のようにベッドに倒れ伏した。
しばらくして、多少楽になった後俺は考える。あれは誰だったのか、本当に彼氏だったのか、実は違うのでは、菜由里は何を言おうとしていたのか、誤解だったのでは、話を聞いてもよかったのではないか、などといろいろな憶測が蔓延るなか
……………………パリンッ。
心の中でガラスが割れるような音がする。
……ま、いっか!すぎたものはしょうがない!俺は選ばれなかっただけだ。うじうじしてても意味ないしな!
これからは、ポジティブでいこう!そうだ!素直に祝福してあげないと!!彼氏さんに悪いし連絡先とかも消したほうがいいかな?
いくら幼馴染っていっても男女だし気にするよね!距離も置かないとな!俺が、菜由里の彼氏だったら嫌だし!!
こうして少年はだんだんと壊れてしまった。だが、これは始まりでしかなかった。
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