Your Life, My Life, and Living.
判家悠久
Until I met you.
広島の呉にある私立呉実践高校は少々厄介に入る。厄介と言っても、昔ながらの私立故の曰く付き高校ではなく、入るは容易く卒業は難いの校風だ。
成り立ちは、戦後復興の中で看護師が不足し、各名士の協力から看護科のある高校、私立呉実践高校が創設された。実践とあって、有能な有志が広島県で大きく活躍している。そこでの曰くは、実践校のスパルタが無ければ私はいない。その言葉を、心から真に受けるべきだったと思う。
そして、流行病を乗り越えての今夏。今の俺はと言うと、体育の従業週3回以外に、週2回の朝のプールでの強化遠泳も加わる。最初は泣き咽んだ。何せ伝統の詰め詰めスケジュールなので、男女共同のプール使用になる。夏、女子、水着、俺の輝かしい青春が始まった、筈だった。
そう、体力増強に、瀬戸内海育ちに、そこに南海トラフ地震対策も加わり、遠泳はただ過酷だった。普通に泳げば良いかも、何かと担当教官から、メガホンで厳しい指導が入り、もっと早く泳げるでしょう、追加3周と、女子を見惚れる暇もない。いや女子と同じプールにいるだけも、そんなの初日で吹っ飛んだ。
やっと強化遠泳の終了の笛がなると、男女共にプールから上がり、束の間の眼福になる。但し3分。そして猛者はいる。
「樹さ、やっぱり巡は別格だよな、全部がシュッツ、シュッツ、スルー、あいつは大人になったらレースクイーンになるべきだよな」
「言うかね、龍生。この前迄、展子、ナイスバディ、グッドだったよな。何だよ、それ」
「展子、あれだよ。基本どヤンキー枠で入学しただろう、それで、それで、ふうだよ。俺のコミュケーション能力って、そんな低いかだ」
「だから巡に行くか。我が私立呉実践高校1年2組、クラスのマドンナ桜庭巡さんにだよ」
「樹、そこアップデート。桜庭巡は、今や全校の清純派少年の人気急上昇。まあ夏休み前に、海水浴場巡りに誘おうかな」
「そこも、どうかな。巡はお嬢さんだよ。広島のヴァールトンホテルでゆったりだよ。俺達とは天と地、ここは待って待っての捲土重来さ」
「だよなあー」
スクール水着の女子が甲斐甲斐しくも後にする。人数が人数だけに、着替えの場所は自らの1年2組のクラスの為に、男子は20分の待機時間を厳命される。
俺はこの間、目がゴロゴロするので、保健室に行っては見て貰うが別に出来物は無いと、洗浄されてそろそろの教室に戻る。焦点はぼやけていないものの、昨晩の実家のハンバーガーダイニングの洗い物が長かったので、早退しようかなと廊下を歩きながら逡巡する。
そして、不意に1年2組の後方引き戸ドアを引くと、目の前が真っ白になった。女子が一人残ってる。
頭にバスタオルを巻いているが、前髪パッツンに黒髪ロングヘアー。小顔にクリッとした瞳が今も引き込まれ、たった今分かったかが、想像以上に惹かれている。そして身長162cm、体重推定40kg、スリーサイズ自重。それは、あの巡。たった今水着を着替えたところの裸身で、シュッツ、シュッツ、スルーの肢体が鮮明過ぎる。
いや、俺はこの時点で大パニックになっている。巡は両手で胸を隠すも、巡の下半身には何故か俺と一緒のものが付いている。俺は、自分自身を解したく。
「あの、女子陣の着替えは、まだだったかな」
「そこ、私がドライヤー忘れて、ちょっと借りたから伸びてる。捲るから、待ってて」
「そのう、」
「ああ、私ね。女子としては特別待遇だから、女子皆と一緒に流石にね」
「そうですか」
「何で、有るって、聞かないの」
「いや、女子だし、現に胸隠しているし。やはり巡は、そう女子扱い。合ってるよね」
「合格。ここ話すと長いけど、違和感ないでしょう。ジェンダーレスは世界の新しい形。あれ、」
あれはあれだ。時間通りに男子が帰って来た。俺は、この状況を秘匿すべく、閂を、いや俺が中にいて巡と一緒にいたら滅多打ちを食らう、それならばと外にで、自ら盾になるしかない。食いつくのは龍生。
「保健室早いな、樹、どうした。俺達も着替えないと、朝のお祈りの時間始まるぞ」
「あっと、いや、入ろうとしたら、誰かいた。ギリギリ一線飛び越えなかったが、まずい、非常にまずい」
「とか言って、樹、女子見たんだろ。ここはうっかりの線で、俺達も」
「駄目だ!俺が死んでも守る、何が何でもだ」
前方の前方引き戸ドアから、何かの制服の影、巡が軽快に飛び出る。
「樹、セーフ、超セーフ、ありがとう。またあとで、」
巡はそのまま、2階ラウンジへと駆け抜けて行く中、皆がキョトンと見つめる。
何だセーフかよ、いやこの親しげな巡って何だ、樹はヒーローか、女のを操守って。ああ、巡一歩リードかで、隈なくハイタッチを貰う。今になって震えるが、巡の秘密を死んでも言えない、言ったら、巡が可愛そうだ。いや、俺は何を巡を守ろうとしているんだ。
果たしてこの日から、俺と巡のとても不思議な友情が花開いて行く。
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