第13話 試験開始

「はぁはぁ……何とか間に合ったな……」

『ギリギリじゃったのう……流石に儂もヒヤヒヤしたわい』


 試験当日の今日、俺達は悪魔学園が所有する山に転移するための転移門前に班ごとに並んでいた。

 しかし、他の人達と違って、俺はまだ始まってもいないのに息絶え絶えな状態。


 こんな時は……いたっ!


 少し探すとその溢れんばかりの神々しいオーラを纏ったヘラを見つける。

 班の人達と既に並んでおり、試験だからかその凛々しい姿に俺の体力が無限回復する。

 

 因みに疲れていた理由は、非常に単純で、集合時間に遅れそうになったから走って来ただけだ。

 結果はギリギリセーフだった。


「それにしても……どうして親友はそんなにギリギリに来たのだ?」

「いや……少し事情があってな……」


 俺は、先に此処に来ていたゴミ屑クルトを誰にもバレない様に睨む。

 ゴミ屑クルトはビクッと身体を震わせた後で、焦りながら壊れた魔道具———精霊と悪魔の意識を混濁させる魔力発生機を見せて来た。


『ちゃんと本物だろうな?』

『も、勿論です! 何ならゼウス様に見せても構いません! それに、契約した嫉妬の大悪魔レヴィアタンを人質に取られた僕に何か出来ると思いますか!?』

『まぁ……そうだろうな……』


 俺はあの後———ゴミ屑クルトに無理矢理レヴィアタンを完全に召喚させると、ゼウスにとっ捕まえて貰った。

 そして現在も、レヴィアタンにはゼウスの固有精霊世界に閉じ込めている。


 悪魔の契約者は、精霊の契約者と1つだけ違う所がある。


 それは———悪魔が消滅すれば、契約者も消滅してしまうことだ。

 しかも悪魔側は一定時間経てば復活するが、契約者はどんな魔法でも復活することは出来ない。

 ゼウスが言うには魂が消滅してしまい、その人がこの世からもあの世からも全ての観測出来る世界から消え失せてしまうかららしい。


 つまり———ゴミ屑クルトは俺を絶対に裏切れないと言うことだ。


 本当はあの場で殺したかったが、そうすれば色々と後始末が面倒だし、魔導具の止め方も教えて貰わなければならなかった。

 だからこうして命の手綱を握って自由を奪っている。


 そして俺が遅刻しそうになったのも、この魔導具を破壊するためだ。

 コイツが同じ魔導具を何十個も作って様々な所に設置していたせいで、俺が探し回って破壊しなければならなかった。


『本当にこれで最後なんだろうな……? 忘れるな、お前の命は俺の気分次第ということを、な』

『は、はいッ!!』


 俺がそう釘を刺すと、ゴミ屑クルトはブンブンと頻りに頭を縦に振った。

 

「どうしたんだ、アイツは?」

「いや、気にすることじゃない。まずは試験に集中しよう」

「……そうだな! どうせアイツは頭おかしいからこんなこともあるか!」

「私は〜〜少し気になるけどなぁ〜〜」


 ミレイユが俺ではなくゴミ屑クルトに妖艶な笑みを浮かべる。

 俺はそんやミレイユを一瞥した後で、ゴミ屑クルトに話さないように脅———脅迫してから、転移門に入った。



 






「———それでは試験内容を発表する!」


 全員が森に転移したのを確認した悪魔学園の教師が、声を張り上げた。


「これから諸君にはこの森に生息しているモンスターを倒し、その強さに応じてポイントを貰い、ポイントの数で競い合ってもらう。皆には1人1人に腕に付けるポイント測定器を装着してから試験を行ってもらう。これはただポイントを測定するだけでなく、致死ダメージを受けた生徒を護る結界が発動し、同時に教師の下に転移される仕組みになっている」


 そう言って俺達は魔法で飛んで来た腕輪型のポイント測定器を装着。

 

「邪魔だなこれ。親友もそう思わないか?」

「まぁ……命綱でもあるんだし、我慢したらどうだ?」

「この森に俺より強いモンスターなんて存在しないぞ」


 物凄く傲慢な物言いだが、確かにこの森自体にヴィルヘルムに匹敵する強さを持つモンスターは存在しない。

 それどころか、恐らく殆どのモンスターがヴィルヘルムの軽めのパンチで死んでしまうだろう。


 しかし———精霊と悪魔が暴走すれば、話は全くの別だ。


 流石に大悪魔や超越級の精霊を暴走させる程の力は魔道具にはないが、悪魔や精霊が暴走すればその強さは、一時的に火事場の馬鹿力の如く跳ね上がる。

 更に精霊は数が多いので、幾らヴィルヘルムであっても多勢に無勢だろう。


 まぁ……その魔導具は、俺が全て壊したんだけど。


 しかし、だからと言って安心も出来ない。


 何せ原作厨の転生者が世界に干渉出来る力を持っているので、魔導具を破壊しても何かしらの方法で暴走させられるかもしれないという可能性が付随してくる。

 一応今の所不審な人物の気配はしていないが……気配を隠している可能性も無きにしも非ずといった感じなので、警戒しておいて損はないだろう。

 

「それでは———試験開始!!」


 教師の言葉と共に生徒達が一斉に森の中に入り———地獄の試験が始まった。

 

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 現在、作者が力尽きるまで1日2話投稿をしています。

 なので、頑張って欲しい、ヘラ可愛いなど思って下されば、☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!

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